高校生のチームで日本一を争う高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0」(ステージゼロ)の決勝大会が19日~22日にかけて行われました。5対5の対戦型PCゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」(LoL)部門では、沖縄県のN高校「KDG N1」が数多の強豪校を退け、昨年に続き2連覇を果たしました。高校生が見せた激闘を解説します。

決勝は「頂上決戦」に

決勝大会は、予選大会を勝ち抜いた8校がトーナメント形式で戦いました。トーナメントを抜けて決勝の舞台に立ったチームは、昨年の王者・N高「KDG N1」と、東京都のクラーク記念国際高・秋葉原ITキャンパス「Yuki飯食べ隊」でした。N高は、プロチーム「Rascal Jester」の練習生であるShakeSpeare選手(大友美有さん)を始め、選手全員が高いプレイヤースキルを持っています。

試合時間が30分を超えることも珍しくない「LoL」において20分程で試合を終わらせるなど、決勝大会でも圧倒的な力を見せて勝ち上がってきました。対してクラーク記念国際高は、準決勝で「今大会のダークホース」と呼ばれていた県立岐阜商相手に1つもオブジェクトを与えず、ノーデッドで圧勝を収めました。大会を通して頭一つ抜けていた両校が戦う、「頂上決戦」と呼ぶにふさわしい組み合わせとなりました。

両校の狙いがにじみ出たバンピック

実は昨冬の全国高校eスポーツ選手権の決勝でも対戦していた両校。苦渋を飲まされたクラーク記念国際高にとってN高はまさに因縁の相手、昨冬のリベンジマッチという格好になりました。決勝はBo3形式(先に2勝すると勝利)で行われました。N高はリーダーを担うADC・ぷりも選手と、プロ練習生のSUPPORT・ShakeSpeare選手のいるBOTから有利を築き、ドラゴンやタワープレートといったオブジェクトを獲得することで、試合のペースを握るチームです。

対するクラーク記念国際高はキャプテンのJUNGLE・Funahwi選手(大村尚君)を起点にゲームを進めるチーム。攻撃的なチャンピオンを選択して徹底的にジャングル内を制圧することで、レーナーにプレッシャーをかけ続けます。両チームともに、いかに得意なパターンに持ち込めるかがカギとなります。

決勝1戦目のバンピック

1戦目のバンピックを見ていきましょう。バンフェーズでは、N高校はJUNGLEチャンピオンを、クラーク記念国際高は準決勝でぷりも選手が活躍をしたハイマーディンガーを含むBOTチャンピオンをバン。両校とも警戒している選手に向けて制限をかける形になりました。

さらにN高はJUNGLEとして1対1に強いオラフを選択。徹底的にFunahwi選手への対策を行います。 バンピックの結果、N高は時間経過と共に能力が上がるセナ、サイオンを選択することで時間をかけて戦いたい構成になりました。クラーク記念国際高は序盤に強いチャンピオンを選択することで、N高が有利になる後半までに試合を勝ち切る狙いがあります。

一歩も譲らない攻防戦

高いパフォーマンスを見せたN高・rre選手のアカリ

試合開始6分、N高のMID・rre選手が魅せました。序盤にキルを取りたいクラーク記念国際高は、JUNGLE・Funahwi選手とMID・Nanabito選手(田中勇輝君)でrre選手のアカリを狙います。rre選手は倒される前に巧みな操作技術でNanabito選手のガリオを倒してファーストブラッドを獲得。さらに時間を稼いだことで味方の援護が間に合い、N高はFunahwi選手も倒すことに成功しました。実況のeyes氏が「個人技の塊」と息まくrre選手のアウトプレーによって、序盤に有利を築きたいクラーク記念国際高の狙いを止めました。

1分後、N高のShakeSpeare選手がMIDレーンでキャッチされるも、クラーク記念国際高が前のめりになった瞬間にTOP・vann選手が扱うサイオンのRスキル「猪突猛進」が突き刺さり、N高はさらにキルを稼ぎます。しかし、クラーク記念国際高も負けてはいません。11分のドラゴンファイトではキル差で不利を背負っている中、ノーデッドでN高全員を倒し切ります。両チームともに一歩も譲らない攻防が繰り広げられます。その後は何度か少数戦が起こるも、ファームを重ねる時間が続きます。

冷静な判断でチームを支えたクラーク記念国際高・Funahwi選手のバロン獲得

均衡が破れたのは25分、MIDでの集団戦でした。N高がブッシュからクラーク記念国際高を狙い、集団戦に勝ち切ります。そのままバロンを獲得してタワー差を付けました。その後、ドラゴンやキャッチを起点に集団戦が起こりますが、N高のMID・rre選手が扱うアカリが暴れます。アサシンの特性を活かし、クラーク記念国際高のキャリーがダメージを出す前に倒し切ります。

集団戦から有利を広げ始めたN高は36分、2度目のバロンにラッシュ。寄ってきたクラーク記念国際高へ反転している間にクラーク記念国際高・Funahwi選手が好判断でバロンを獲得。首の皮一枚繋がるも、N高は焦らずエルダードラゴンを倒します。そのままクラーク記念国際高のネクサスになだれ込み、N高がまず1勝を挙げました。

リーダーのぷりも選手だけでなく、TOPのvann選手、そして新進気鋭の1年生MID・rre選手も大活躍を見せ、選手として十分に存在感を発揮しました。しかし、40分という試合時間は、これまで20分で試合をたたんできたN高にとって、クラーク記念国際高が拮抗するチームであることも示しています。最後のFunahwi選手のバロン獲得は、集団戦に敗れた味方が復活するまでの時間稼ぎとしては最適解でした。劣勢になっても冷静に判断をするリーダーの存在は、N高にとっても脅威と言えるでしょう。

止まらないN高の勢い

決勝2戦目のバンピック

これまでBo1で戦ってきた選手達の修正力が試される2戦目。N高が勝てば優勝、クラーク記念国際高が勝てば3戦目へもつれる重要な局面です。バンフェーズは1戦目と変わらず、N高のADC・ぷりも選手、クラーク記念国際高のJUNGLE・Funahwi選手に向けたバンとなりました。対してピックフェーズは1戦目の影響が色濃く出ることになりました。N高は1戦目で高いパフォーマンスを見せたMID・rre選手のアカリをファーストピック。

クラーク記念国際高はアカリ対策として、復活スキル「クロノシフト」を持つジリアンを選択。rre選手を中心としたピックが行われる展開となりました。最終的にN高はオーソドックスな構成に、クラーク記念国際高は1人を狙うことに特化したカミールを選択することで、キャリーであるN高のアカリやアッシュを倒して集団戦に勝ちたい構成になりました。

試合を序盤から動かしたN高・ACCIDENT選手のガンク

2戦目は、N高のJUNGLE・ACCIDENT選手のへカリムが暴れます。試合開始6分、ぷりも選手とShakeSpeare選手のいるBOTで有利を築くためにガンクを決行。スキルを温存してゴーストから入ることで、クラーク記念国際高のラカンによるピール後にもダメージを出し続け、1キルとドラゴンを獲得しました。


9分にはTOPでサイオンとダイブを決め、キルとリフトヘラルドを獲得。BOTに召喚することで、BOT2人にさらにゴールドを集めました。ACCIDENT選手の活躍により、大きな有利を築きました。警戒していたFunahwi選手相手に全く引けを取らない大活躍を見せてくれました。

その後もN高の勢いは止まりません。クラーク記念国際高はカミールを起点にN高の選手をキャッチするも、N高の寄りが早く有効なトレードが行えませんでした。一度築いた有利を譲ることなく決勝まで勝ち抜いてきたN高の安定感は抜群でした。選手全員が活躍を見せて勝利を掴みました。結果、2-0でN高「KDG N1」の優勝となりました。

昨冬の全国高校eスポーツ選手権でもN高に決勝で敗れて涙を飲んだクラーク記念国際高・秋葉原ITキャンパス「Yuki飯食べ隊」にとっては、またしても悔しい準優勝となりました。

N高が優勝を決めた瞬間

試合後、N高のリーダー・ぷりも選手は「不安だったので、優勝できてよかったです」とコメント。優勝が決まり画面越しに飛び上がって喜んでいた姿からは、強豪校と対峙する緊張、そして王者としての重圧を感じていたのだと想像できます。実況・eyes氏、解説・revol氏からMVPに選ばれたMID・rre選手は「本当にうれしい。アグレッシブに行動した結果MVPが取れました」と喜びをあらわにしました。まだ1年生のrre選手、今後は高校生を代表するMIDレーナーとして活躍が期待されます。

優勝インタビューで喜びを語るN高のShakeSpeare(大友美有)選手

また、大会を通して攻撃的な姿勢で活躍を見せたShakeSpeare選手は、「すごい不安で、準決勝から緊張してたので優勝できてよかったです」と喜んでいました。しかし、「MVPは欲しかったの?」と聞かれた際は、「MVPは欲しかったです。欲しくて相手の方に行っていたら死に役になってしまいました」と高校生モデル兼プロ練習生の熱い向上心を覗かせてくれました。

敗れたクラーク記念国際高のキャプテン・Funahwi選手は「ただただ悔しいです。1戦目のメンタルコントロールが2戦目に出てきてしまった」とBo3ならではの試合の難しさを話してくれました。「チャンピオンプールが広くて、バンピックの段階からやりづらいチームでした」

また、1vs1での強さを発揮してきたponkotu23選手(山田捷斗君)は「優勝するために練習してきたので悔しいです」。siroshi15選手(鬼島至雄君)は「チーム一丸となってこの2カ月間、講師の方含めて一緒に練習してきて、その成果を出したかったです。1戦目負けた後の空気感を改善できたらより良い試合ができたと思うと、後悔でいっぱいです」と決勝1戦目の結果を引きずってしまったことを悔いていました。

それでもborutu選手(上野壮志朗君)は「自分は実力がなかったのですが、夏休みを通してコーチの方が準優勝のレベルまで導いてくれて感謝の気持ちでいっぱいです」と話してくれました。Funahwi選手も「LoLをゲームではなくスポーツとして見ているので、チームゲームのすばらしさを後輩たちに広めていきたいと思います」と前を向きました。

8月から1カ月以上にわたって行われた「STAGE:0」。昨年の王者としての重圧をはねのけ、常に自分達のペースを握り続けたN高の2連覇で幕は閉じました。

プレイ歴わずか10か月!ダークホース・県立岐阜商がベスト4

県立岐阜商からクラーク記念国際高への応援メッセージ

今年のSTAGE:0決勝大会では、高校生ならではの個性あるチームが勝ち上がってきました。1校目は県立岐阜商です。特徴は選手全員が「LoL」を初めて10カ月という点。しかし極めて若いチームでありながら、ブロック代表になるだけでなく、決勝大会のベスト4まで勝ち上がってきました。その実力は実況・eyesさんから「10カ月ではないチームです」とチーム紹介で断言されるほど。「ダークホース」としてその名を轟かせました。

準決勝でクラーク記念国際高に敗れた際は、選手が泣いてしまう場面もありました。その涙は10カ月間の不断の努力の証と言えるでしょう。試合後、県立岐阜商はクラーク記念国際高との試合に向けて「打倒 Yuki飯」と書いたホワイトボードを、「必勝 Yuki飯」に書き換えてSNSで発信。クラーク記念国際高のFunahwi選手は決勝前のインタビューで「自信に繋がりました」と、県立岐阜商の応援を力にしていました。勝負の枠を超えた友情が築かれました。プレイ歴10カ月で全国ベスト4に勝ち上がった若きチームは、来年はダークホースではなく強豪校としての活躍が期待されます。

最後までエースを信じた都立国際高

1回戦、都立国際高vsルネサンス大阪高のバンピック

今大会で際立っていたチームをもう1つ紹介します。東京都立国際高校「Team Alt+F4」です。準優勝となったクラーク記念国際高と同じ関東ブロック代表で、決勝大会では惜しくも初戦で敗れてしまいましたが、尖ったチーム構成を最後まで貫きました。

都立国際高はリーダー兼エースを担うADCのKobiTo選手のLoL紹介動画を見て、LoLを始めたメンバーで構成されているチームです。「尖った構成」とはプロテクトADC構成を指します。ADCがスケールの良いマークスマンを選び、他の選手は前衛を担えるタンク系チャンピオンや、シールドや通常攻撃強化を付与できるエンチャント系チャンピオンを選択することで、ADCのKobiTo選手がダメージを出せる環境を作り上げる狙いです。

「尖った構成」と呼ばれる所以は、もしADCが倒されてしまった場合、ダメージを出せる選手がいなくなる点にあります。KobiTo選手は他の4選手が自分を守り切ってくれると、他の4選手はKobiTo選手が必ずダメージを出してくれると、お互いに信じているからできる構成だと言えます。まさに「ワンフォーオール オールフォーワン」を体現しているチームです。都立国際高は関東ブロック代表決定戦から決勝大会まで、プロテクトADC構成を貫きました。敗れてはしまいましたが、「信頼関係」という点において間違いなくSTAGE:0で名を残したと言えるチームでした。

ドラマが詰まっていた「STAGE:0」

試合が終わり、飛び上がって喜ぶ選手、悔しさを飲み込んで相手を送り出す選手、思わず涙を流した選手、様々なドラマが2日間に詰まっていました。精一杯努力をしたからこそ、感情が表に出るのだと感じた「STAGE:0」。選手や関係者だけでなく、視聴者をも熱狂させてくれた高校生ゲーマーたちの戦いは今後も続きます。

(澤部衛)

決勝大会他部門の結果

【フォートナイト部門】
優勝  沖縄・N高「しぐま部屋」
準優勝 愛媛・東温高「1年5組」

【クラッシュ・ロワイヤル部門】
優勝  東京・三田国際学園高「翠雲」
準優勝 沖縄・N高「Nexus」

大会の結果はこちらから。

「TOKYO eSPORTS HIGH!」YouTubeチャンネル
「有吉ぃぃeeeee!」YouTubeチャンネル
「STAGE:0」公式Twitter
「テレビ東京」公式Twitch
「スポーツブル」

「STAGE:0」

同じ高校内のチームで日本一を争う、高校対抗eスポーツ大会。クラッシュ・ロワイヤル、フォートナイト、リーグ・オブ・レジェンドの3部門がある。昨年の第1回大会は、全国の高校1475校から1780チーム・4716人が参加。配信視聴者数は約136万人だった。第2回大会の今年はオンライン形式での開催。今年は1779校から2158チーム・5555人がエントリーした。