「ブロスタ」は2018年12月にグローバルリリースされた。記事執筆時点でリリースからほぼ一年と半年が経過している。

開発を担当するSupercellは過去に「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」や「クラッシュ・オブ・クラン(クラクラ)」などの大人気スマホゲームを生み出した企業だ。ゲームの長期的な運用はお手の物と言っても過言ではない。

「ブロスタ」も独自のアプローチでゲームのポテンシャルを引き出し、緩やかながら着実にコミュニティーの土台を築いてきた印象だ。

その証拠として、大会数の増加が挙げられる。今年2月時点で「ブロスタ」関連の大会やイベントはほぼゼロ。しかし3月になると状況は一変し、34回のコミュニティー大会がTonamelで一挙に開催された。4月も大会数は伸び、極めつけは5月だ。なんとスマホタイトルではTonamelで当月で最も多い137回もの大会が開催された。1日あたり4回以上大会が開かれた計算だ。

Tonamelの協力、YouTuberたちも後押し

Supercellでコミュニティー・マーケティングを担当する脇氏

一体なぜこれほどまでに大会が増えたのか。Supercellでコミュニティー・マーケティングを担当する脇俊済氏はこう答えた。

「大きな要因は幾つかありますが、最も大きかったのはTonamelさんの協力を得られたことです」

Tonamel(旧:Lobi Tournament)とは、株式会社カヤックが運営するトーナメントプラットフォームである。エントリーやトーナメント表の作成、大会の進行や結果発表などをまとめて行える、大会主催者向けのサービスだ。

TonamelとSupercellが協力関係を結び大会数が増えた、と簡単な足し算のように聞こえるが、それだけでは疑問が残る。0から1の部分、つまり3月初頭の急激な盛り上がりについては説明がつかないのだ。Tonamelのサービス自体は何年も前から存在しているのに、なぜそのタイミングでユーザーが流れ込んで来たのか。

「大きなキッカケになったのは3月初頭に開催されたイベント『ウェルプレイドフェスを救いたい』でした」

例年開催されているウェルプレイドフェスティバルは新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催延期となったのだが、YouTuberであるドズル氏が立ち上がり、生放送企画「ウェルプレイドフェスを救いたい」を3月1日に敢行した。

その生放送内で、YouTuberのじゅりまつ氏の協力のもと「ブロスタ」の大会「ブロスタトーナメント~プロチームも参戦!最強は誰だ!?~」が開かれた。この大会が、「ブロスタ」大会開催ブームの火付け役となった。

行き場を失ったプレーヤーに希望を与えたい

前提として、日本における「ブロスタ」はプレーヤー同士のオフラインでの繋がりが強いタイトルだった。昨年に行われた「世界一決定戦」やRAGEと共催した「日本一決定戦」も大盛況で、19年末に開かれたブロスタフェスも200人規模のエントリーがすぐ埋まってしまうくらい、リアルで足を運ぶほどの熱量の高いプレーヤーが多い。

脇氏は「ブロスタにおいて最も有名なコミュニティーに『F2F』という団体があって、大会やオフ会などを頻繁に開催していました。誰でも参加できるコミュニティーの場に、世界ランキングでトップ3に入るプロチーム『JUPITER』や、彼らと良い勝負をするトッププレーヤー達が、日ごろから参加している――この独特の雰囲気が素晴らしいコミュニティーなんですよ」と誇らしげに語る。

だからこそ、オフラインで繋がりづらくなる新型コロナの影響はコミュニティーに大打撃を与えた。

「大型のオフラインイベントが次々延期となり、多くのプレーヤーが消化不良に陥いりました。特に3月1日に予定していた大会は規模も大きく、腕まくりしたままのプレーヤーたちの行き場を作らなくては、と強く感じました。じゅりまつさんと話し合い、オンラインではありますが代替となる『ブロスタトーナメント~プロチームも参戦!最強は誰だ!?~』を開催することになりました。エントリーや進行をどう管理したものかと思い、そんな折にさとけんさんとお話しする機会があって、Tonamelを使うことになりました」

プレーヤー自ら大会を開くように

Tonamelのコミュニティーマネージャーを務める佐藤氏

Tonamelのコミュニティーマネージャーを務める「さとけん」こと佐藤謙太氏は、当時のエントリー状況をこう振り返る。

「当初は延期となった『ウェルプレイドフェス』と同規模の64チームくらいがエントリーする想定で募集を開始しました。すると、すぐに定員に達してしまったので、次は倍の128チームにしてみたんです。またすぐに定員に達したので、最終的に256チームまで募集を拡大しました」

新型コロナの影響下で、ユーザーに求められていたイベントが開催されたこと。その土台となるプラットフォームがTonamelだったこと。これらの要因が重なり、Tonamelの認知度は急激に高まった。

さらに、じゅりまつ氏がSNSでTonamelの利用方法を拡散したことで、ユーザー主体の大会開催のハードルがさらに下がった。佐藤氏は「Tonamelを初めて利用するプレーヤーばかりでしたが、じゅりまつさんが先導してくれました」と語る。

オフラインイベントが無いなら、自分たちで集まれる場を作れば良い。プレーヤーたちは自らオンライン大会を開くようになり、「ブロスタ」コミュニティーはさらなる盛り上がりを見せるようになった。

ユーザー主導の文化を定着へ

Tonamelの認知度も高まり、利用者も増えた。だが勝負はここからだ。ユーザー主導の大会を、コミュニティーの文化として定着させなくてはならない。3月に灯った火を繋ぐため、SupercellとTonamel、そして「ブロスタ」コミュニティーは、足並みをそろえて行動に出た。

一歩目となる施策が「ガイドライン」のテンプレート化だ。プレーヤーにとって新しいプラットフォームとなるTonamelの使い方を「ブロスタ」の公式ブログなどでまとめたり、ゲーム内のニュースとして紹介することで、大会開催のハードルを極力下げる工夫を行った。

さらなる施策として、「F2Fブロスタ」や「JUPITER」などの「ブロスタ」コミュニティーを代表するような団体・プレーヤーたちにも協力してもらい、大会を開催した。注目が集まる大会は「ブロスタ」の公式Twitterでも積極的に拡散し、コミュニティー内に「誰でも大会が開ける」という風を吹き込み続けた。

また、Tonemelの「認定大会支援」という仕組みの認知拡大も行われた。一定条件を満たした大会の主催者と、上位入賞したチームに景品のサポートを行うシステムだ。この仕組みをより広めることが、個人主催の大会を増やす後押しとなった。

施策の甲斐もあってか、2ヶ月で大会の開催数は4倍にまで成長し、6月の大会数も取材時点で100回を超えている。Tonamelと「ブロスタ」の相性もさることながら、恐るべし運営とコミュニティーの連携力である。

コミュニティー大会が生み出す「ブロスタ」の未来

Tonamelでは「ブロスタ」の大会が盛んに開かれている

最後に、コミュニティーへの貢献と「ブロスタ」の未来について、2人の目標と熱い想いを聞いた。

脇氏は、Tonamelを通して「ブロスタ」大会が身近になる世界を思い描き、こう語る。

「Tonamelがしっかりと定着することで、大会がより身近に感じられるようにしたいです。そしてブロスタチャンピオンシップという大きなイベントにプレーヤーの皆さんが気軽に、そして本気で参加できるようにしたいと思っています。出場している選手たちを皆で応援したくなるようなコミュニティーを作ることが、今年の目標です」

「ユーザーの皆さんが知っている日本のチームが年末の世界大会に出場して、誰もが熱狂的に試合を見ている。見ている傍ら、自分の友達と色んな大会に参加するなど、自分なりに『ブロスタ』を楽しんでいる。そういうコミュニティーができれば嬉しいなと思います。願わくば、新型コロナの影響が落ち着いて、『ブロスタ』コミュニティーらしいオフラインの楽しみ方も取り戻せれば、嬉しいですね」

そしてTonamelにおける大会開催の波はブロスタに留まらない。幅広いジャンルのタイトル――格闘ゲームや、PCの人気FPSタイトル「VALORANT」――での大会も増え始めているという。佐藤氏はTonamelはまだまだ成長過程にある、と答える。

「ブロスタで言うと、じゅりまつさんのようなコミュニティーの中心となる方々を魅了できれば、コミュニティー全体からも支持されるようになります。また、コミュニティーが求める品質のサービスを作れるよう、フィードバックを集めていくこと、そしてコミュニケーションを密に重ねていくことを重視しています」

また佐藤氏は、Tonamelの浸透の先に見据えている未来をこう語る。

「『JUPITER』や『我が名はB-boy指定』など、日本の『ブロスタ』チームはかなり強いのですが、その強さの基盤は大会経験にあると思っています。例えばアメリカ勢が非常に強い某格闘ゲームタイトルを見てみると、毎日大会が開かれている。だから気軽に大会を開催できる環境を整えて大会数を増やすことで、『ブロスタ』プレーヤー、ひいてはチームのステップアップに貢献したいと考えています」

逆境の中、負けじと盛り上がりをみせる「ブロスタ」。大きな連帯感のなか、2020年、ゲームタイトルとコミュニティーがどのように成長していくのか。

「ブロスタ」の大きな波は、すぐそこまで迫っているのかもしれない。

ブロスタ

個性的なキャラクターを操作して戦うモバイル向けバトルアクションゲーム。Supercellが開発、運営をしている。「移動」「攻撃」「必殺技」「ガジェット」の四つのボタンで手軽に戦略的な駆け引きを楽しめる。3対3の対戦モードに人気がある。