黒豆選手が語る「FIFA」の神髄 サッカー選手のリアルな「判断」をゲームで感じる

EAから発売されているサッカーゲームシリーズ「FIFA」。10月9日に最新作「FIFA 21」の発売が控えるなか、リアルのサッカークラブが「FIFA」を使ったイベントを開催するなど盛り上がりを見せています。ゲームの魅力について「FIFA」のプロプレーヤーで「ガンバ大阪」の選手として大会に出場した経験もある黒豆選手が語ります。
EAから発売されているサッカーゲームシリーズ「FIFA」。10月9日に最新作「FIFA 21」の発売が控えるなか、リアルのサッカークラブが「FIFA」を使ったイベントを開催するなど盛り上がりを見せています。ゲームの魅力について「FIFA」のプロプレーヤーで「ガンバ大阪」の選手として大会に出場した経験もある黒豆選手が語ります。
読者のみなさん初めまして。プロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming(CAG)」のFIFA部門に所属している黒豆です。サッカー歴6年、サッカーゲーム歴15年のサッカー好きで、プロゲーマー歴は3年になります。
「サッカー好きだけどサッカーゲームよくわからん!」という人や、「FIFAを真剣にやってるけど正直プロのこととかeスポーツについて全然しらん!」「某別のサッカーゲームしかやったことないよ!」なんて思っている人に向けて、自分の経験を踏まえながらFIFAについて語っていきます。
2020年は「FIFA」というサッカーゲームシリーズのコミュニティーが盛り上がりを見せる年になっています。大きなきっかけは、Jリーグクラブの推薦を受けたプレーヤーたちが戦う「FIFA 20」のeスポーツ大会「eJ.LEAGUE」の代わりに、オンライン大会が開催されたことでした。
eJ.LEAGUEはもともと3月~4月でオンライン予選を行い、5月にオフライン決勝を行う予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止となり、選手それぞれの自宅から大会に参戦できるようにオンライン形式の大会がで3~4月に開催されたのです。
※「フライデーナイトeJリーグ」と「eJリーグオンラインチャレンジカップ」の二つのオンライン大会が開催されました。
Jリーグが開催した大会以外にも、7月にEAが主催したオンライン大会「FIFA 20 Summer Cup Series Asia」で Blue United eFCに所属するアグ選手が優勝してアジア王者の座を手にするなど、話題は尽きません。
さて、最初からFIFAだのeJ.LEAGUEだのと語ってしまいましたが、ゲーマーではない方はFIFAと聞けば「国際サッカー連盟」のほうを思い浮かべる人が大半ではないでしょうか。
そこでまずは「FIFA」というゲームの魅力をゲーマーでない方にも分かりやすく紹介したいと思います。
今回語りたいのは、「サッカー観戦をしてるときに選手の判断に疑問を抱く人にこそFIFAをプレーしてほしい」ということです。
例えば試合を見ていて、相手ゴール前でGK1人に対して味方はボールホルダーともう1人フリーな選手がいる状況があったとしましょう。シュートを打つか味方にパスをするかの選択を迫られるシーンです。そしてボールホルダーはシュートを打ったが相手GKに阻まれてしまった……。
サッカーファンがこんなプレーを目の当たりにしたら、思わず「フリーな選手にパスをだしておけば確実にゴールを奪えたじゃないか」と言いたくなるでしょう。その考え方はとても合理的で、正しい指摘だと思います。
では選手全員がいつもそのような合理的でエゴを捨てたプレーの判断をすることができるのでしょうか。私はできないと思っています。その理由を「FIFA」を使って説明します。
「FIFA」にはプロクラブというモードがあります。このモードは「11on」、つまり11対11の合計22人のプレーヤーが対戦するものです。基本的に「FIFA」は1対1の個人戦(1on)で自チームの選手全員を1人で操作するモードがメインですが、プロクラブモードではプレーヤー1人ひとりが固定のポジションにつき、11人で1つのチームとなります。
つい最近、テレビ番組「有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?」で元プロサッカー選手などと一緒にこのモードをプレーしていたので、見たことがある方もいると思います。
要するに一番リアルサッカーに近く、リアルのサッカーを疑似体験できるゲームモードです。このモードをプレーすると、選手の「判断」をより深く知れると言っても過言ではありません。
ゲームではモンスターを倒したりバトルロイヤルをしたり、現実では体験できない理想を叶えてくれるものですよね。それはサッカーゲームでも変わりません。
現実ではリフティングが5回できない人であっても、ゲームでは簡単なボタン入力だけでリフティングはもちろん、シュートやパス、ドリブルなどをあたかも一流選手のように行うことができます。さらにテレビ放送と似た俯瞰視点でプレーするので、立体的にフィールド全体を見れます。22人の選手の場所が分かるミニレーダーもあります。
それだけシステムに補助された環境でサッカーができれば、誰しも間違った判断なんか下さないと思いませんか。ゲームの操作にも慣れていて、相手チームにずば抜けて高いステータスの選手がいない状況なら、なおさら。
ところが先ほどあげた例と全く同じ場面になると、プレーヤーが横パスを出さず強引にシュートを打って外すのは起こり得ることです。
シュートを打ったプレーヤーに非があるわけではなく、「システムに補助された環境であってもゴールを奪える確率が最も高いプレーを選択するのは難しい」ということです。
「自分なら絶対にパスする」と思う人もいるでしょう。そんな方こそぜひFIFAのプロクラブモードをプレーしてみてください。自分の目の前にゴールがあるときにパスを選択する難しさを体感できると思います。
今回はサッカー好きな方なら誰もが意見したくなるようなシーンをピックアップしましたが、FIFAはこの他にも様々なシーンで判断を求められるゲームです。そのたびに成功する確率が最も高いプレーを選択し続けることは、実は非常に難しいのです。
話の主題とは少しそれますが、ゴールを決めるよりもアシストが好きみという菩薩のようなプレーヤーも稀に存在します。そういう人はきっと簡単にパスを選べるのでしょうが……(笑)。
偉そうなことを語っている私も常に正しいい判断はできませんし、それで良いと思っています。なぜならサッカーの魅力の一つは、独創的な発想で観客が想像もしていないプレーにあるからです。どのプレーヤーも不完全だからこそ名プレーが生まれるのだと、私は考えています。
もちろん、合理的な判断を求める勝利至上主義の方もいます。サッカーは色々な考え方であふれていて、それが様々な魅力につながっているのではないでしょうか。
プロゲーミングチーム「CYCLOPS athlete gaming」のFIFA部門所属。「FIFA 10」よりシリーズをプレー。始めてからはクラブモードを中心にプレーし、1on対戦に熱を入れ出したのは「FIFA 16」から。
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