「みんなで楽しむ」RTA ディープな世界の「Games Done Quick」が始まる

ゲームクリアの早さを競うRTAの大型チャリティーイベント「Gamers Done Quick」(GDQ)が16日(日本時間17日未明)から始まります。GDQは最速を狙うだけでなく、「みんなで楽しむ」ことを目的としているちょっと変わったイベントです。その魅力をゲーム好きの筆者が紹介します。
ゲームクリアの早さを競うRTAの大型チャリティーイベント「Gamers Done Quick」(GDQ)が16日(日本時間17日未明)から始まります。GDQは最速を狙うだけでなく、「みんなで楽しむ」ことを目的としているちょっと変わったイベントです。その魅力をゲーム好きの筆者が紹介します。
ゲームには、クリアタイムの早さを競う「RTA(リアルタイムアタック)」なるジャンルが存在する。いわゆるスピードランの一種だ。
ゲームで早さを競うと聞くと、モニター前のプレーヤーが手汗をかきながらコントローラーを握りしめ、ゲーム内の一挙手一投足に全神経を集中させている……といったイメージを思い浮かべるかもしれない。
しかしRTAのチャリティーイベント「Games Done Quick」(GDQ)は、そうしたRTAに対するイメージと良い意味で相反している。走者(プレーヤー)の手腕に会場が湧くのはもちろんだが、実にユニークな催しとなっているのだ。
GDQとは、様々なビデオゲームのRTAを取り扱うチャリティーイベントだ。主催はGDQ運営委員会。毎年冬季に「Awesome Games Done Quick」(AGDQ)を、夏季に「Summer Games Done Quick」(SGDQ)を開催しており、初開催から今年で10周年を迎える。
いずれも開催中は寄付金を募っており、収益は全て慈善団体へ送られる。寄付金額は開催を重ねるにつれて増大しており、去年の「SGDQ2019」では約3億1800万円にも上った。昨今のRTAイベントにおいても、特に規模の大きいイベントだ。毎年アメリカ国内の会場で開催されてきたが、8月16日より1週間に渡って開かれる「SDGQ2020」は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けてオンラインイベントに変更となった。
プログラムは上述の通りRTAがメインだが、興味深いのは最速クリアタイムの更新に加えて「走者のパフォーマンスや観客の盛り上がり」を重視している点。普通にプレーしているだけでは気づかない仰天テクニックの紹介をはじめ、走者とMCで軽妙なトークが繰り広げられるなど、エンターテイメント要素が強いのだ。
今回は「GDQが見たくなる筆者セレクト名場面」を三つ紹介したい。単なるRTA以上の魅力を持つGDQの世界を、ぜひ感じてみてほしい。
走者と観客が一体となるGDQの魅力を端的に現したシーンとして、まずは「デビル メイ クライ」のRTAを推したい。
本作の最速クリアを目指すMAXYLOBES氏を見ると、フィールドを素早く移動するためにスティンガーを連発している。こちらは本作の主人公ダンテの固有アクションで、剣を前方に突き出しながら勢いよく突進するという技だ。
プレー中は幾度となく繰り出されるスティンガーを前に観客もヒートアップ。技の発動に合わせて「Yeah!」と声を上げ、走者のプレーを大いに盛り上げた。
会場の観客と配信を眺める視聴者の笑いを誘った名場面と言えば、「SDGQ2014」で勃発した謎の歌唱シーンも欠かせない。
歌声が会場に響いたのは、「ファイナルファンタジーVI」のRTA中のことだった。メインキャラクターの一人セリスが夜空に向かって高らかとオペラを歌い上げるシーンにて、突如モニター前に座る男性の一人がマイク片手に熱唱。
マイクを通して響き渡るハイトーンボイス(ボイスチェンジャー有)に、観客からはシュールな笑いが漏れ、会場は困惑気味な拍手に包まれた。
GDQは一人の走者が挑戦するRTA以外に、複数の走者が同時にゲームをプレーする対戦形式に近いRTAもポピュラーだ。両者のテクニックが洗練されるあまり、別々に操作しているはずなのに「全く同じスピードでゲームが進む」という奇跡のような現象も起こりうる。JCOOL114氏とKWANIZA氏が挑戦した「スーパーマリオサンシャイン」もその一つだ。
「モンテのむら」を軽やかに疾走する両者の間には、わずかながらタイム差が生じていた。先行する走者がミスを起こすか、後続する側がパフォーマンスをを向上させない限り、この差は埋まりづらい。
ところが、序盤こそ遅れ気味だったKWANIZA氏のプレーに改善の兆しが見える。というのも、その場でアクションを修正しつつ、JCOOL114氏とのタイム差を埋めることに成功したからだ。ステージ内の木箱や柵の上をアクロバティックに飛び移り、最終的に2人はほぼ同タイミングでクリア条件を達成した。最速を求めて確立された攻略ルートを辿ったからこそ、鏡合わせのような「ミラープレー」が生まれたのだ。
ゲームをプレーしたことが無くても、走者の卓越したプレーングを見ているだけで何となく楽しめる。それがGDQの良いところだ。
開催を間近に控えた「SDGQ2020」では8月16日~8月23日の1週間、新作ゲームからレトロゲームまで、実に多種多様なタイトルでたっぷりとRTAが行われる。開催期間中は有志団体「JapaneseRestream」のTwitchアカウントにて日本語解説もされるので、英語が分からなくても心配無用だ。日本では17日午前0時半から配信が始まる。
注目すべきタイトルは盛りだくさんだが、「ポケットモンスター シールド」など新規作品のRTAは特に注目しておきたい。というのも、発売して長く立っていないゆえに、まだ誰も発見していない「時短テクニックのお披露目会」として機能することが多いからだ。とはいえ、基本的には自分が興味のあるタイトルをチェックしておけば間違いないだろう。
ぜひこの機会にRTAのディープな世界に足を踏み入れてみてほしい。