「ストリートファイターV」で活躍を続けるベテランゲーマーsako選手(41)。その公私にわたるパートナーが奥様でありマネージャーでもあるakikiさんです。今年で結婚10周年を迎えた二人に、出会いからこれまでの道のりを聞きました。

出会いは香川の自動車教習所

――sako選手とakikiさんが結婚されてから今年で10年になりますが、馴れ初めは?

akiki:出会ったのは24歳のときですね。

sako:17年くらい前になるのかな。勤めていた会社から「自動車免許が必要だから取って来い」って言われて、香川県の免許合宿に行ったんですよ。そこが圧倒的に安かったんで。

akiki:私はちょうど転職しようと思っていた時期で、勤めていた会社の有給を使って短期間で取れる合宿を探していたら、香川の多度津(たどつ)っていうところでコミコミ14万円くらいの合宿を見つけたんですよ(笑)。

――そこで出会ったのですね。

sako:でもねえ、多度津ってなんもないんですよ。

akiki:港のすぐそばに自動車学校がある光景を想像してみてください。

sako:店もなんも無いし、周りには海しかない。駅も無人で電車も二両でボタンを押さないとドアが開かないってやつです。

akiki:当時はコンビニに行きたくても歩いて行けるところが無いくらい田舎でしたね。

sako:昼間は勉強しながら運転をするので忙しいんですけど、夜がすごく暇なんですよ。

当時は携帯がガラケーでゲームも少なかったし、ゲームセンターは自転車で1時間くらいのところにあるゲームコーナーくらいしかなかったんです。

それで合宿の他のメンバーと麻雀したりしてるときに、この人(akikiさん)が夜中の1時くらいに帰ってきて「弟とファミコンのツインビーやってた」って言ったんですね。

akiki:私は実家が香川なんです。だから弟に迎えに来てもらって、実家でご飯食べてから弟と夜中までゲームで盛り上がってたんですよ。それで寮に帰ってきて誰かから話しかけられて、「ゲームやってました」って言ったら、それまで隅っこで黙ってたsakoが「ゲームやってたんですか!」って前に出てきたんです。

sako:ゲームできなくてストレス感じてたんですよ。そこからもうゲームの話ばっかりしてましたね。

akiki:次の日から「おはようございます」って声かけてきて、「ゲームするんですか? ゲーセンとかも好きですか?」「格闘ゲームわかります? 俺、格闘ゲームするんですよ」ってすごい前ステでしたね(笑)。

sako:前ステでしたね(笑)。

akiki:合宿中は土日も暇なので、寮の人たちと高松にあるゲームセンターに行ったんですけど、そこで対戦を始めちゃったんですよ。わりとゲーム好きの人が集まるゲーセンだったんですけど、対戦台の反対側で人がぐるぐる入れ替わっていつまで経っても終わらなかったんです。他の人も最初は待ってたんですけど、興味ない人たちは「俺ら先行くね~」っていなくなっちゃったんですよ。私は3時間くらいずっと待ってました(笑)。

sako:あのときは30連勝くらいしたかな。

akiki:途中一回負けたら明らかに熱くなって「俺のメインキャラこれじゃないんで」って言って連コインしてそこからまた連勝したんですよ(笑)。

別れるかついていくかの選択肢を突きつけられる

sako選手(右)とakikiさん

――そうして付き合い始めたわけですね。

akiki:でもしばらくしてから、私の母が難病にかかって余命宣告を受けてしまったんです。そのときは既に同棲していたんですが、母のそばにいたいから香川に帰ると話をしました。お互いすごいしっくりきていたんですけど、遠距離恋愛は無理だなという感じがしていたのでどうしようかと。

sako:別れるかついていくかの選択肢を突きつけられたわけです。

akiki:突きつけてはいない(笑)。

sako:でも、離れると多分別れることになると悟って、香川に介護の手伝いをしに行くことにしたんです。

――香川では対戦ができずに辛かったのでは?

sako:そうですね。まだ「ストリートファイターIV」で通信対戦ができるようになる前の時期だったので、対戦といえばゲームセンターでやるものだったんです。ゲームセンターまで高速に乗って1時間くらいかかる場所に住んでたんですけど、行っても対戦相手がいないんですよ。たまに入ってきてくれても、熱量が違いすぎてすぐに終わっちゃうんです。CPU戦だけやって帰ることも多かったですね。

akiki:関西に住んでるときは、仕事終わったらすぐゲーセンに行ける環境でしたからね。

sako:香川に住んでたころはだいぶきつい環境でした。

akiki:基本温和な人なのにけっこうピリピリしちゃっていたので、まずいなと思って「ゲームしに帰った方がいいんじゃないの?」という話になったんです。

sako:当時は香川から神戸まで安く船が出てたんですよ。神戸にゲーム連中が集まってたんで、月1くらいで遊びに行ってましたね。

akiki:ゲーム仲間が神戸の港まで迎えに来てくれたよね(笑)。

――そうして結婚に至るわけですね。

akiki:sakoのご両親からすれば、結婚もしていない彼女の実家に引っ越して介護を手伝ってるんですから、心配だったと思うんですよ。母が亡くなったときにsakoのご両親も来てくださったんですが、お父さまが「で、これ結婚する方向でいいですよね?」とおっしゃったんです。

sako:空気読まずズケズケ行く感じで。

akiki:あそこでお父さまが言い出さなかったら大阪に戻っても籍は入れてなかったかもしれません。そこから私たちはそっちのけで家族の間で「するよね」という話になっちゃったんですよ。私達も、じゃあそういう方向に進もうかな~みたいな感じで(笑)。

ただ、母を亡くして父が落ち込んじゃっていたので、父が元気になるまではそばにいたいと思い、sakoに先に帰ってもらったんです。

sako:俺がいったん大阪に戻って、再就職して結婚できる準備ができたら呼ぶということになって、1年くらいの遠距離恋愛を経て結婚しました。

akiki:これは笑い話なんですけど、結婚してすぐの時期に「『ストリートファイターIV』の通信対戦がすごい」って話題になったんですよ(笑)。

sako:Xbox 360を買いに行ったんですけど、人気すぎてどこも品切れで。無いと余計欲しくなるじゃないですか。

akiki:当時は香川の実家の近くにゲームショップがあったんですけど、田舎だから売れ残ってるんですよ。よし買いに行こうって急いで高速に乗って、香川に向かったんです。

sako:それで無事買い物を済ませて、お父さんに挨拶して帰りました(笑)。

――通信対戦が盛んになるタイミングが少し遅かったんですね。

sako:1~2年ずれてましたね。

いつの間にかマネージャーと呼ばれるように

akikiさん

―― akikiさんはいつからマネージャーを務めるようになったのでしょうか?

akiki:sakoがプロになる前の2010年からです。昔のゲーマーって、友だちの本名も連絡先も知らないってあったじゃないですか。

sako:ゲーセンで出会う人としか遊んでなかった上に「ヴァンパイアセイヴァー」っていう古いゲームをやってたんで、友達も少なかったんですよね(笑)。

akiki:2010年に「GODSGARDEN ONLINE」っていう大会が開催されたんですけど、そのときウメハラさんがsakoを招待選手に選んでくれて、運営の方が連絡を取ろうとしてたみたいなんです。

でも誰もsakoの連絡先を知らなくて、やっと知っている人を見つけて連絡を入れてもらったんですけど、sakoがめんどくさがりなんでそもそもケータイを見てないんです。そうしたら私に連絡が来るようになってしまったんですね(笑)。

sakoのゲーム友達が「こういう大会があるから出なよ」って言ってくれたのですが「めんどくさいからええわー」と断っちゃったらしく、「ほんとに凄い大会だから、一緒にsakoを説得して!」と言われたのが、マネージャーとしてのスタートだったと思います。説得に加わった流れから「めんどくさいことはやってあげるから」と、そのまま連絡係になってしまいました。

結果、そのときの大会でウメハラさんを倒して優勝したので「sakoは強い奴なんだ」と認識されて、海外からも色々な連絡が来るようになったんです。どれも英文だったので翻訳したり、こちらからも英文メールを送ったりしているうちに、完全に私が窓口だと思われるようになったんですね。

――自然発生的にマネージャーになったのですね。

akiki:そうですね。マネージャーになったというより、いつの間にか周りからそう呼ばれるようになりました。

――もしakikiさんがマネージャーになっていなかったら?

sako:たぶん今みたいにはなってないですね。めんどくさいから大会とかも出てなかったと思う。ゲームで強くなることには興味あるけど、大会ってそのときだけのものだから興味が無かったんです。

でも友だちが「出た方が良いよ、こんな機会めったにないよ」って言うので出ようかなと。色々なものが上手くかみ合った感じですね。

akiki:私たちはネット配信も見ていなかったので、「GODSGARDEN」がどれくらいすごい大会なのかもわからなかったんですよ。「世界中が注目してるすごいイベントだから」って教えてくれたセイバー勢の友だちのおかげですね。

齋藤大輔撮影、再利用時確認
sako選手

――最近は二人で配信も取り組んでいますね。

sako:俺があまりにもしゃべれないので、人前でしゃべれるようになるために始めたんですよ。個人配信なので相手も自分に興味があって来てくれた人だから、懐かしいネタや自分が面白いと思うネタが多くて、話しやすいんですよね。

おかげでインタビューなどでも、だいぶしゃべれるようになりました。

akiki:プロになってからも、生配信とか全部NGだったんですよ。色々な配信や番組から「イベントに出てください」とオファーが来たんですけど、生放送のものはsakoが全部断ってと言うので、露出が少なくなってしまっていたんです。

sakoが生でしゃべれたら仕事の幅が広がると考えていたときに、ある実況者の方から「akikiさんはけっこうしゃべれるし、sakoさんのことを話しているだけで楽しいから二人でやってみたらいいよ」と勧められて配信を始めたんです。

「ここでsakoが話せるようになったら一石二鳥じゃん」と思って、sakoにもちょっとずつ出てきてもらって「少し席外すからつないどいて」と強制的に一人でしゃべらせたりして訓練していました(笑)。

sako

世界有数のテクニックを持つ技巧派プロプレーヤー。現在はプロチーム「FAV gaming」に所属。国内外の数々の大会で好成績をおさめ、2013年にはCAPCOM公式世界大会「CAPCOM CUP」を制し、初代世界王者の座に輝く。「ストリートファイターV アーケードエディション」ジャパン・eスポーツ・プロライセンス保有。41歳の国内最年長プロゲーマーで、2月に開催された「EVO JAPAN 2020」では3位に入賞するなど、技量にますます磨きをかけている。

akiki

sako選手の妻で、マネジャーも務める。Twitterでsako選手の動向や対戦格闘ゲーム界隈の情報を発信し、ファンと交流。Twitchでの動画配信にも積極的で、sako選手が参戦している大会の応援配信もする。長く活動してきた経験から、後輩たちの相談に乗ることも。

「ストリートファイターV」について

「ストリートファイター」シリーズは、1987年に業務用ゲーム機として第1作目を発売後、1991年発売の「ストリートファイターII」において大ヒットを記録しました。革新的な対戦システムが話題を呼び、家庭用ゲームソフトでは全世界でシリーズ累計 4,400万本(2019年12月末日時点)の出荷を誇るなど、対戦格闘ゲームというジャンルを確立。登場から 30年経た今なお世界中で人気を博しており、eSportsにおける格闘ゲーム分野を牽引するタイトルとなっています。「ストリートファイター」シリーズ史上初の「PlayStation®4」ユーザーと PC ユーザーが対戦できる「クロスプラットフォーム」プレイの導入を実現しております。
最新作は2020年2月14日発売の「ストリートファイターⅤ チャンピオンエディション」(PS4/PC)になります。http://www.capcom.co.jp/sfv/