同じ高校内のチームで日本一を争う高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0(ステージゼロ)」が、今年も開催されています。昨年12月の第2回全国高校eスポーツ選手権のリーグ・オブ・レジェンド(LoL)部門で準優勝した秋葉原ITキャンパスも頂点を狙うチームの一つです。9日にスタートする関東ブロックの大会を目前に、熱のこもった練習をこなしています。

上下関係に縛られない雰囲気

大会を前に生徒たちは練習試合で調整

「いま、どこいる?」「あと8秒待って」「オッケー」

7月中旬。LoLの試合に取り組む生徒たちのボイスチャットでは、学年に関係なく対等に言葉が飛び交います。

1年前は、敬語が抜けずに萎縮しながらプレーしていたという2年生の鬼島至雄君(17)は「日常会話から自然と打ち解けていきました。ゲームで敬語を使っていると単純に情報量が減ってしまうんです」と説明します。

Aチームのキャプテン、3年生の大村尚君(17)も年下との対等な会話を全く気にしていません。「ゲームに集中しちゃうので、あまり敬語とか気にしないです」。上下関係に縛られず、eスポーツ専攻の生徒はとても明るい雰囲気です。

トップチームの控えか、2番手チームのレギュラーか

柔らかい表情で語る3年生の佐藤君(澤部衛撮影)

そんな中、大会を前に大きな決断を迫られた生徒がいます。3年生の佐藤光君(18)。トライアルの結果を受けて、Bチームのプレーヤーか、Aチームの控えかを打診されました。Bチームの5人に入れば試合出場が確約されますが、Aチームの6人目では試合に出られるかどうかは分かりません。

佐藤君がこの学校を選んだのには、理由がありました。

「中学生のころ、少し周りと共通の話題とか持てなくて、若干学校に行けない時期がありました。専門的なことを学べる学校なら共通の話題を持てる人がいて、自分のやりたいことを見つけられるんじゃないかと思って来ました」

やりたいことや好きなことが学べる多彩な特化型コースが設置されたこの学校は、佐藤君にとってはうってつけの環境でした。また、通信制ながらもキャンパスに来て学ぶというスタイルは、友だちや先生とコミュニケーションを取る機会を自然と増やしてくれました。

それでも、新型コロナウイルスの影響で登校できない時期は、不安でした。

「登校時間を練習にあてられるのはよかったです。でも、焦りはありました。もしかしたら他の高校もそういう時間で練習できているかもしれないので、差を埋められているんじゃないか、開かれているんじゃないかという思いもありました」

eスポーツが自分を全開にしてくれた

そうして迎えた7月半ばの校内でのトライアル。結果を受けて佐藤君が選んだのは、意外にもAチームの控えでした。

「Aチームで大きい大会を経験した方が自分のメンタルにもいいし、強いメンバーとやれた方が自分もうまくなれますし」。高校卒業後もeスポーツを続ける決意をしており、向上心は忘れていません。

何より表情に暗さがありませんでした。

「中学のころより自分らしくなったというか、自分を表に出せるようになりました。話題がなかったから縮こまって暮らしていたのが、この学校に来て共通の話題を持てたら、自分を全開にできたという感じがします」と話す顔には満面の笑みが浮かんでいました。

顧問の笹原圭一郎先生(25)はこう言います。「チームとして目標に向かって努力をするということを同じ空間で経験する。それが生徒たちにとって、大事だと考えています。人はゲームを通じて成長することができる、と実感しています」

eスポーツ専攻の目標は、必ずしもプロゲーマーになることではありません。笹原先生たちの思いは「eスポーツを通じて『何か』を学んでほしい」。佐藤君の表情は、それが実践できていることを物語っていました。

決意を述べるAチームのキャプテン大村君(澤部衛撮影)

最後にキャプテンの大村君に大会への意気込みを聞きました。

「冬の大会で負けてとても悔しかったので、今年こそ絶対、とその悔しさをバネに練習しているので」と前置きしたうえで、「優勝します、したい」。そこは大事なところ、どっち?と問い直すと「優勝しますっ」。そう宣言したときには、周囲の生徒たちからドッと歓声と拍手が沸きました。

最高の雰囲気で大会に臨みます。

クラーク記念国際高校

1992年に開校したクラーク記念国際高校は全国に50を超えるキャンパスがあり、1万人以上の生徒が学びます。世界最高峰エベレストに70、75、80歳で登頂したプロスキーヤー三浦雄一郎さん(87)が校長を務めています。

通信制でありながら制服を着て、毎日通学して学ぶ「全日型教育」というスタイルで、カリキュラムの柔軟性が高いことが特徴です。さらに、web学習を組み合わせて週に数日の通学や自宅学習をメインとしたコースも選ぶことができます。

自宅学習中心のコースに入学した生徒が、途中で「学校へ通ってみたい」と考えた場合に通学型へ変えるなど、状況に応じて在学中に変更することも可能です。どの通学スタイルでも、高校卒業資格を取得できます。

中学校時代に不登校などを経験した生徒にも学びの選択肢が多く用意されています。また、教員はカウンセリングの有資格者で、不登校経験のある生徒のケアにも取り組んでいます。

「STAGE:0」とは

同じ高校内のチームで日本一を争う、高校対抗eスポーツ大会。クラッシュ・ロワイヤル、フォートナイト、リーグ・オブ・レジェンドの3部門がある。昨年の第1回大会は、全国の高校1475校から1780チーム・4716人が参加。配信視聴者数は約136万人だった。

第2回大会の今年はオンライン形式での開催。8月のブロック代表決定戦、9月19〜22日の決勝大会で、日本一を決定する。今年は1779校から2158チーム・5555人がエントリーしている。詳細は公式サイトで。