「あっ、オレ、いま行けなかった」「いいよ、いいよ」「あー、もう。ごめん」

eスポーツ専攻で学ぶ生徒たちが5対5で対戦する「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」のオンライン練習に取り組んでいました。

生徒たちの目下の最大目標は、同じ高校内のチームで日本一を争う高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0(ステージゼロ)」です。これとは別の大会である第2回全国高校eスポーツ選手権(昨年12月)のLoL部門では準優勝に輝いた秋葉原ITキャンパスチームですが、昨夏の「STAGE:0」では決勝大会に進めず、関東ブロックで敗退。9日にスタートする今年の関東ブロックの大会で雪辱を誓っています。

全日型通信制を掲げるクラーク高校

1992年に開校したクラーク記念国際高校は全国に50を超えるキャンパスがあり、1万人以上の生徒が学びます。世界最高峰エベレストに70、75、80歳で登頂したプロスキーヤー三浦雄一郎さん(87)が校長を務めています。

通信制でありながら毎日通学して学ぶ「全日型教育」というスタイルで、カリキュラムの柔軟性が高いことが特徴です。また、web学習などを組み合わせて在宅で学ぶスタイルも採り入れており、中学校時代に不登校などを経験した生徒にも学びの選択肢が多く用意されています。

秋葉原ITキャンパスの特色であるスポーツコース・eスポーツ専攻は、単にゲームに取り組むだけではなく、eスポーツに関わる情報や経済、国際関係など周辺領域も学び、eスポーツ留学も含め国際社会で活躍できる人材への成長を目指しています。

eスポーツ専攻では、普通科目を午前、午後にeスポーツ科目を学びます。元プロゲーマーの2人が専属コーチとして指導にあたっています。在籍する生徒は1~3年生で30人です。

秋葉原ITキャンパスには他にも声優・放送専攻、ゲーム・プログラミング専攻、マンガ・イラスト専攻、AI・ロボット専攻、スポーツコース・フットサル専攻があります。「好きなことから未来を広げていこう!」をモットーに実践的な教育を展開しています。

友人たちがライバルに

普段はともに技と頭脳を高め合う生徒たちですが、7月半ばに「ライバル関係」となりました。eスポーツ専攻の生徒たちは校内で1週間のトライアウトを戦っていました。その結果で選ばれたメンバーだけが「STAGE:0」に出場できるからです。

2年生の鬼島至雄君(17)は実力者を集めるAチームと、Bチームの当落線上にいました。

Aチーム入りを勝ち取った鬼島君(澤部衛撮影)

「競っていた相手が1年生だったということもあって、焦りがものすごくありました。自分がBチームとなったときのことを考えて、すごく不安に陥りました。親には自分の不安をずっと話していました」

悩みはリアルなスポーツの部活動で抱えるものと何ら変わりありません。顧問を務める笹原圭一郎先生(25)によると、相談に来て感極まって涙をみせる生徒もいるといいます。

鬼島君も、とにかく必死でした。「先生にも個人的に2時間くらい話をしました。コーチの方にも、自分の足りないところはなんですか、という感じでアドバイスを求めたりしました。1週間のトライアルの期間には、本当に何度も」

鬼島君がAチームにこだわったのには、わけがありました。「第2回全国高校eスポーツ選手権ではAチームでやらせてもらいました。そこで負けた悔しさが残っているので、絶対にAチームになりたいと思っていました」

選んでもらったことに恥じないプレーを

大会を前に生徒たちは練習試合で調整

昨年冬の選手権で全国準優勝という実績を残した生徒たち。新型コロナウイルスの影響で、今年は登校できない時期もありましたが、下を向くことはありませんでした。

鬼島君は「登校の時間がなくなり、自分の自由な時間が増えるので、熱中してプレーすることができたと思います。遊ぶ時間じゃなく、eスポーツとして時間を使うことによって大会へのモチベーションも高まりますし、大会の動画とかを見て、悔しさをバネに頑張っていました」と話します。

「この学校は、『eスポーツをやる時間だから』というスイッチを入れることができる。それはとても大きいです」

結果は、ライバルに競り勝ってAチーム入りが決定。「選んでもらったということに恥じないプレーをして、優勝したい」と大会へ向けて力が入ります。

競って育まれる実力

Bチームのキャプテン味川君(澤部衛撮影)

ただBチームも負けてはいません。Bチームのキャプテン、2年生の味川怜平君(16)は「Aチームに比べれば劣っていますが、Aチームと競うことで他の学校より実力がつくものがあるので」と話します。

実力的には他校のチームと肩を並べるほど。笹原先生も「Bチームと言っていますが、強いです。実は僕はBチームに期待しています」と太鼓判を押します。

「AチームとBチームで練習試合をずっとやっていたのですが、勝てる見込みもないわけではないです。Aチームを倒す勢いでこの大会も頑張ろうかなと思います」と味川くん。大会に出場する全員が高いモチベーションを持っています。

「STAGE:0」とは

同じ高校内のチームで日本一を争う、高校対抗eスポーツ大会。クラッシュ・ロワイヤル、フォートナイト、リーグ・オブ・レジェンドの3部門がある。昨年の第1回大会は、全国の高校1475校から1780チーム・4716人が参加。配信視聴者数は約136万人だった。
第2回大会の今年はオンライン形式での開催。8月のブロック代表決定戦、9月19〜22日の決勝大会で、日本一を決定する。今年は1779校から2158チーム・5555人がエントリーしている。詳細は公式サイトで。