eスポーツを活用して、障がいの有無に関わらず企業内や企業間の交流をはかることをめざした「PUBG MOBILEバリアフリー企業交流戦」(ePARA主催)を5月30日、オンラインで開きました。このイベントは関係者限定の企画でしたが、人気eスポーツキャスターOooDa(岡上哲也)さん(@OooDa)をゲストに迎えての開催となりました。

参加した企業は「BASE株式会社」「ビーウィズ株式会社」「グリービジネスオペレーションズ株式会社」「株式会社凸版印刷」(eスポーツチームのE1 HEROES)「株式会社ePARA」です。いずれも社内にeスポーツチームがあり、所属する健常者と障がい者のメンバーがFPSの「PUBG MOBILE」を練習してこのイベントに参加しました。

このうち、ネットショップを簡易に作成できるサービスを運営する「BASE株式会社」のメンバーにインタビューをしました。

PUBG MOBILEの試合の一場面(ePARA提供)

同じ環境や共通のテーマがあると参加しやすい

――BASE株式会社社長室HRマネージャーの三條陸さんは企業のマネージャーとして、企業交流戦のどこに興味を持ったのでしょうか?

三條:eスポーツのアスリートチームが社内にあるBASEとしては、参加できるeスポーツイベントがあれば、企業交流戦に限らず参加したいと思っています。企業交流戦でないといけない理由は特にありませんし。

ただ会社をバックボーンにしているチームではあるので、障がい者雇用など同じような環境や共通のテーマで企業同士が一緒にプレーできるイベントはとても参加しやすいと思っています。こうしたイベントにはいつでも参加したいですね。

また、レポート記事やプレー動画のなかで、会社の事業が大会参戦のバックボーンになっていると取り上げやすいですよね。そういう意味でも、今回のイベントは視聴や応援がしやすいイベントだったと思います。

PUBGの試合の一場面(ePARA提供)

――通常の交流イベントと企業交流戦に違いはありますか?

三條:企業同士の対戦という文脈でやっているので、単にゲームをプレーするのとはちょっと違う独特の緊張感があると思います。

ただ、企業対抗戦でなくても、今回のイベントのように記事や動画で「結果が残る」からこその緊張感はあるかと。対外的な配信があるイベントだから生まれる緊張感、そして緊張があるからこそ応援の熱が高まるのではないでしょうか。

ゲームでは敬語を使わないでコミュニケーション

オンラインでインタビューに応じるyujikunさん

――BASE株式会社勤務のyujikunさんは先天性のプルーンベリー症候群により排尿機能などに障がいがあり、日本初のパラeスポーツアスリートとして東京eスポーツフェスタなど様々なイベントに参加されています。今回はイベントに向けてどのような準備をされましたか?

yujikun:1ヶ月ぐらい前から社内でチームメイトを募集しました。最終的に、社内で別々の仕事をしている2人と、アスリート社員である僕とTATSUYAの4人に決まりました。社内で募集した人は「そもそもFPS自体やったことない」という人たちでした。

まず最初に、そういった人でもゲームやFPSを好きになれるよう、コミュニケーションを図ることに重点を置きました。一緒にゲームをやりながら雑談したり、話していく中でお互いの仕事内容などの自己紹介をしたりしました。そこからイベントの2週間ぐらい前になって、徐々に本格的に練習を行いました。例えば、プロの動画を見て真似できる作戦があったら、それをメンバー内で「これいいですね」と紹介しました。

一番いいなって思った取り組みが、「敬語に関する提案」でした。一緒にゲームをやっていく上で、仕事の関係もあって敬語で話しがちだったんです。「ここに敵がいますよ」「危ないですよ」のように。

でも、「今回イベントに向けてガッツリやっていくなら敬語は要らないよね」って提案してもらって。しかも、それをチームの中で年齢が一番上の方から言ってもらったんです。それで僕たちも「なるべく敬語無しにしようか」と。そこからメンバー間のコミュニケーションが一気に円滑になったので、すごく良かったですね。

メンバーのみなさんも忙しい中、時間を作ってくれました。PUBGはログイン履歴を見られるんですよ。履歴を見ると、みんな1日1時間ぐらいは1人でやっていました。高いモチベーションでやってくれたな、というのはすごく嬉しかったことです。

TATSUYAはそのときのメンバーと今も一緒にゲームをやっているので、今後にも繋がりました。社内交流の活性化という点で、とても良い効果があったと思っています。

どんな機種や環境でもプレーできれば

オンラインでインタビューに応じるTATSUYAさん

――TATSUYAさんはBASE株式会社とプロスポーツクラブ名古屋OJAに所属するパラeスポーツプレーヤーです。 進行性筋ジストロフィーの障がいがあり、電動車椅子を使っています。 また、「ボッチャ」で日本一を二度経験しています。イベントがあった5月30日は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除された後で、チームワークを高めるのが難しい時期だったと思います。名古屋在住のTATSUYAさんは上京できない中でどのような心境だったのでしょうか?

TATSUYA:僕は昨年11月からリモートワークという形で雇用して頂いており、ネットでのやり取りは結構慣れていました。ただ、コミュニケーションの量が少なくなってしまっていて。eスポーツをやることで、会社のみなさんもラフに受け入れてくれ、ゲームを通していろんな方と交流ができて、結構コミュニケーションが活性化している印象がありました。

――今回出場した4人のチームはどうやって集まったのですか?

TATSUYA:僕はyujikunさん以外、誰も知らない状況でした。なので、yujikunさんに主導してもらって、「会社でゲームが上手そうなメンバーは?」と聞いてもらったところがはじまりです。今でこそ会社の方と仲良くできているんですけど(笑)。

初対面の方とのコミュニケーションには、個人的には慣れていました。ゲームを頻繁にやっていて、オンライン上でのつながりもあったので、抵抗はまったくありませんでした。ただ、僕は結構まじめな性格なので「敬語を使わない」となったとき、ちょっと抵抗はありました。でも敬語を使わないことでコミュニケーションが活性化して、全体的には大会まで良い空気感で臨めたのかなと思います。

――今後、企業交流戦を行うとしたら、どんなeスポーツタイトルを希望しますか?

TATSUYA:「Apex Legends」が秋にクロスプラットフォームに対応するとニュースで知りました。僕は身体障がいなので、いろんな工夫がないと一緒にうまくプレーできません。どんな機種でもできたら、誰でも参加しやすいと思っています。

インタビューを振り返って

企業交流戦に期待することやリモートでのチームワークの取り方など、気づきが多いインタビューとなりました。ePARAから出場した選手視点での記事は、こちらにあります。次は8月にFPS「VALORANT」でバリアフリー企業交流戦を行う予定です。

ePARAとは

株式会社ePARAに事務局を置く「ePARA実行委員会」では、eスポーツを通じて、障がい者が自分らしく、やりがいをもって社会参加する支援を行っています。支援活動の一環として、障がい者eスポーツに関するニュース発信や、障がい者eスポーツ大会の企画運営を行っています。

大会やイベントを通して「困難や限界を超える精神や力」を多くの人に発信し、より良い社会の実現をめざしています。「PARA」はパラリンピックと同様に平行を意味するパラレルであり、 将来的にはリーグ優勝者がトップeスポーツプレーヤーと対等に試合を行えるようになる「物語性」も含めて「ePARA」と名付けています。

加藤大貴(かとう・だいき)

裁判所書記官として8年間勤務。その経験を通じて障がい者や高齢者の福祉に関心を持ち、品川区社会福祉協議会に転職。2020年に株式会社ePARAの代表取締役に就任。NPO市民後見支援協会理事も務める。