いまはチャンスだ

――サッカーe日本代表に選ばれたときの気持ちを聞かせて下さい。

e日本代表の選出がもしかしたらあるのではないか、と思っていました。「FIFA 20」のシーズン始めには発表されてなかったですけど、あるかなと思って。僕はもともとPS4のプレーヤーだったのですが、Xboxというコンソールに変更しようと決めたのは、e日本代表の選抜があるんじゃないかなという予測があったから。実際に選抜されて、素直にうれしかったなと思います。eスポーツ・サッカーを日本代表として積極的に、日本の多くの人たちに広めていけたらと思います。

――コンソールを変えてしまうくらい日本代表への思いは強かったのですか?

そうですね。出られる大会も増えますし、僕が最終的に目指しているシーズン最後の世界大会「FIFA eW杯グランドファイナル」に進める可能性も上がるというのもあるのですが、日本代表というのは僕のあこがれでもあったので。

――もともとサッカーはやられていたのですか?

中学の3年間だけサッカーを実際やっていました。小学生のときからサッカーを見るのが好きで、小学4年生くらいからサッカー見始めました。サッカーゲームを始めたのもそれくらいでした。

――好きなチームは?

茨城県出身なので、鹿島アントラーズを応援していました。

――では、FIFAを始めるのは自然な流れだったのですね。

そうですね。FIFAを始める前はウイニングイレブンをやっていたのですが、FIFAが面白いというのを友達から聞いていて。試しに買ってみたら、そこからはまっていった。高校1年生くらいのときです。そこからずっとFIFAをやっていますね。

――コロナ禍でのこの状況で、思うような活動ができていないのでは?

コロナウイルスの影響で、今シーズンの世界大会がすべて中止、と先日公式に発表されたのですが、それは正直とても残念に思っています。そのかわり、世間ではリモートで楽しめるものの一つとしてeスポーツ、ゲームが注目されています。僕もeスポーツを多くの方に広めて知っていただけるような仕事を頂いていて。この状況をいまはチャンスだなと思って、普及活動を頑張っていこうかなと思っています。

――普及にかなり軸足を置いてらっしゃるようにみえます。プロになられたころの思いが影響しているのですか?

昔では考えられないような出来事、例えばJリーグとコラボしたeスポーツの大会だったり、eJリーグが過去3年くらい行われていたり。僕がプロになった2015年くらいのときは想像も出来なかったので、本当に昔と比べてeスポーツは日本でも成長してるなと感じています。

――プロになって当初はどういう思いで活動されていましたか?

国内ではFIFA第1号のプロではあったんですが、もともと一緒に世界大会を目指して頑張ってた先輩が日本人でいらっしゃって。その方を目標にというか、一緒に世界大会目指して頑張ろうなって感じでやっていました。当時は世界大会に出てやるぞ、っていうモチベーションだけでやっていましたね。

必ず入るところまで持って行かないとシュートしない

なでしこジャパンの岩渕真奈選手(右)と対戦したfantom選手

――先日、タレントさんやなでしこの選手らと動画企画に参加されていましたが、当時は想像もできなかったのですね?

そうです。昔だったらもう、こんなことが起きるなんてって。コロナでこういう状況だからこそ実現したことなのかなあと思ってますし、FIFAというゲーム、eスポーツ・サッカーを世間に広めるためにはうってつけのようなお仕事を頂いたのかな。

――試合を見ていると、fantom選手はシュートを本当に打たないですね。

はい、打たないですね。これまでゲームをやりこんだ経験と感覚で、このシュートは入るかなとか、このパスは通るかなっていうのは何となく体に染みついていて。なのでシュートを打てるような場面でも、ここは横パスだとか、必ず打てば入るというところまで持って行かないと、シュートを打たなくなってはいますね。

――リアルでは、シュートで終わるのが良し、とされていますが、それとは少し違う思考なのですか?

そうですね。もちろんカウンターで攻められないようにシュートで終わるとか、ゲームのなかでもあるんですが、ここでシュートを打つよりはもっと深くまで押し込んでから、確実に決められるところまで持って行くべきだな、と。そこはゲームとリアルサッカーの違いなのかなと思います。

――eスポーツ・サッカーに関心がある人も増えていると思いますが、eスポーツの可能性をどう感じていらっしゃいますか?

eスポーツ・サッカー、FIFAで言えば、海外ではリアルサッカーのリーグ戦と並行して、FIFAのプロ選手によるリーグ戦が行われています。日本のJリーグでも同じように実現できるんじゃないかと。FIFAのプロ選手によるJリーグみたいな。そういうことが期待できるぐらいには日本のeスポーツの成長は感じていて。ちょっと前は全く考えたこともなかったようなことが、ひょっとしたら近い将来起こりえるんじゃないか、というところまで日本のeスポーツは来てるんじゃないかと思います。

eJリーグが出来たり、実際Jリーグの現役選手がeJリーグを視聴してもらっていたり。eスポーツを見てくれる人の数がどんどん増えているというのもあって、近い将来、日本でもいろいろあるんじゃないかなと期待してしまいますね。

初めて日本人に圧倒された

e日本代表のWeb Nasri選手(左)とfantom選手

――同じ日本代表のWeb Nasri選手は、fantom選手にとってどういう存在ですか?

日本代表のチームメートという立場で言わせてもらうと、頼れる日本のエースだなと思います。僕は「FIFA 18」の最初くらいにNasriくんという存在を知ったのですが、何回か戦ったんですけど、もう全然勝てなくって。「何だ、この子は」と思って白旗挙げていた状態でした。Nasriくんみたいな本当に才能があって若いプレーヤーが日本で出てきてくれたのはとてもうれしいし、彼が世界一を取れる可能性が最もある日本人なんだ、と僕は思っていますね。

――刺激になる存在ということですか?

もちろん刺激になりました。初めての感覚だったんですよ、日本人にこんなに圧倒されるんだって。逆にうれしかったというか。世界にいかなくても、日本でこんなにすごい人が出てきたんだなというのがうれしくて。

――世界と戦ううえで、足りていない、必要だと思うことはなんでしょうか?

今シーズン世界大会に1度出場させてもらったんですけど、その経験からゲーム内の話になってしまいますが、攻撃力というのがとても大事だなと思っています。パリで行われた大会で、前回大会の優勝者と戦わせてもらって、そのときに戦った他の選手とは比べものにならない攻撃のうまさっていうのがあった。ゲームの中で強いプレー、セオリープレーというのがあるのですが、それにとらわれずに逆に逆手にとるような、こちらが予想もしないようなプレーをやってくるので全く止められなくなりました。攻撃面で違いを出していく必要があるなというのは大会を通して感じました。

サッカーe日本代表のfantom選手

――ご自分の性格をどう思われますか。闘争心むき出し、というより、すごく冷静にみえます。

気弱だと思いますけど、どっちかというとそっち寄りだと思います。プレ-中もあまり喜ばないですね。感情を押し殺してやってます。練習のときもそうなんですけど、ほぼ無感情でやってます。そのせいかもしれないですけど、私生活でも感情をうまく表現することができなくなっちゃって。友達としゃべっていても、「怒ってんの?」って言われちゃったりすることがあります。それがちょっと今、悩みなんですけど(笑)。

――e日本代表としての今後の活動や目標を聞かせてください。

国際親善試合とか、eスポーツのフレンドマッチに日本も参加して行きたいと思っています。海外ではFIFAのフランス代表とか、ドイツ代表とかが親善試合をやって強化試合を何回かやっている。それに日本代表も参加していければなと思っていますし、e日本代表が今のFIFAプレーヤーの一つの目標になるような場所にしていけるように、今の代表である僕らが頑張っていきたいなと思っています。僕みたいな人間でも日本代表になれるんだぞ、というところは希望を持って頂けたらと思いますね。

サッカーe日本代表

5月に開催予定だった24カ国の対抗戦である「FIFA eNations Cup 2020」のために創設されたサッカー日本代表の新たなカテゴリー。代表選手は国内予選で決定する予定だったが、予選大会の中止に伴い、「EA SPORTS FIFA 20 GLOBAL SERIES」ランキングで上位だったWeb Nasri選手とfantom選手の2名が選出された。

fantom選手はSCARZ所属で、主な戦績は以下の通り。

FIFA17シーズン: FUT17 Rest of World Regional Final PS4部門優勝、日本選手権優勝

FIFA18シーズン: ESWC Paris Game Week PS4部門ベスト4

FIFA19シーズン: eJリーグベスト16

FIFA20シーズン: FUT Champions Cup Stage Ⅳ Paris Xbox部門ベスト32