オンラインでも戦えるeスポーツ

インタビューに応じる女性プロゲーマーのたぬかな選手

――新型コロナウイルスの影響でeスポーツも多大な影響を受けていますが、たぬかな選手はどのように考えていますか。

鉄拳の世界大会「TEKKEN World Tour 2020(鉄拳ワールドツアー)」の東京大会「TOKYO TEKKEN MASTERS 2020」も延期になってしまいました。今のところほとんどの大会が延期か中止になってしまって、予定を組めなくて困っているところです。でも、だからこそできることもあると思っていて、所属しているチーム「CYCLOPS athlete gaming(CAG)」と相談してわたし主催のオンライン大会をやろうと考えています。

オンラインでも戦えるのがeスポーツの良いところ。ネットワーク環境によって遅延が生まれますが、大会がまったく無いとゲーマーみんなのモチベーションも上がらないと思うんです。私は今、そういう場所を提供できる立場にいるので、なんとかしようと思っています。アマチュアの人が私と組める大会にしてもらって、勝った人にメディアに出たり一緒に仕事をしたりできたらどうかなって考えています。

シンデレラストーリーに刺激

女性プロゲーマーのたぬかな選手

――昨年、「鉄拳7」のeスポーツシーンにArslan Ash(アルスラーン・アッシュ)選手をはじめとするパキスタンの強敵が現れ、注目を集めました。彼らの出現をたぬかな選手はどのようにとらえましたか?

【withnews】格ゲー業界騒然!パキスタン人が異様に強い理由、現地で確かめてみた
【朝日新聞デジタル】ゲームで借金苦に…突然世界一、パキスタン人が語る秘話

格闘ゲーム業界はプレー歴が長い人がずっと強くあり続ける世界なので、新しい人がパッと入ってくることは無かったんです。だからパキスタン国内でずっとプレーしていたものの、世界の舞台には出てきてはいなかったAsh選手が「EVO Japan 2019」で優勝したのはすごくセンセーショナルでした。韓国の有力選手が次々と倒されて会場がざわつき始めて、TOP8の試合あたりからみんながAsh選手を見るようになったのを覚えています。

それまで日本の大会も韓国の大会も、優勝する人の顔触れはあまり変わらなかったので、正直ワクワクしました。しかもAsh選手が優勝者インタビューで「パキスタンにはもっと強い選手がいる」と言い出したのには本当に驚かされて、「私もパキスタンに行きたい!」と強く思うようになりました。

――実際に行く予定は?

パキスタンの選手も誘ってくれてるんです。今は新型コロナウイルスの問題があるので難しいんですけど、今度何人かで修業しに行こうよと話はしています。

パキスタンの選手は若い子が多いんですけど、プレースタイルが洗練されています。Ash君はものすごく相手のことを見ていて、相手の技をかわした後に攻撃するのがたぶん世界で一番速いんです。これは反復練習を相当こなさないと培えない能力なんです。

――膨大な練習を積み重ねているということですね。

「EVO Japan 2019」では優勝賞金150万円を獲得したので、あちらの「鉄拳」コミュニティーの人も、Ash君をすごく応援しながら「自分たちも行きたい! 自分たちもゲームで有名になって海外に行ったりお金を稼ぎたい」とすごく頑張っています。パキスタンの人たちに夢を与えているんですね。

――eスポーツが人生に大きな目標を示してくれているのですね。

それにこの話は日本でも取り上げられて、「鉄拳」シリーズに興味のなかった方からも「そんなストーリーがあるなら見てみようかな」と注目されたんです。「鉄拳」シリーズは海外では人気があるのですが日本ではそれほどでもないので、日本のプレーヤーも「俺が次のAshになる!」って盛り上がってくれたらいいなって思ってます。

*  *  *

韓国勢と日本勢が中心となっていた「鉄拳」のシーンは、2019年のパキスタン勢の登場により急激に勢力が塗り替わりました。激しさを増す戦いの中、たぬかな選手はどのような活躍を見せるのか、2020年も彼女の活動に注目していきたいです。

たぬかな

徳島県出身。プロeスポーツチーム「CYCLOPS athlete gaming(CAG)」に所属する「鉄拳」プレーヤーにして、レッドブルアスリート。男性が圧倒的に多い格闘ゲーム界の中で数少ない女性として活躍し、数々のタイトルで上位入賞を果たしている。