「RAGE Shadowverse Pro League20-21シーズン」が開幕する。コロナ禍を受けて開催も危ぶまれたが、eスポーツの強みを生かしてオンラインでの実施に踏み切った本リーグでは、各チーム新メンバーのデビュー戦はもちろん、昨シーズンの優勝、準優勝チームが開幕戦からぶつかるなど見どころ満載だ。

14日から来年1月まで21節に渡るリーグに向けて、昨シーズンの試合を振り返りながら、カードゲームならではのアツいシーン「トップデック」を解説したい。

トップデックを「引き寄せる」技術

カードゲームにおいて一般的に、今まさに引いたばかりのカードは「トップデック」と呼ばれる。トップデックは新たな選択肢を与えてくれ、時にその選択肢が戦いの行方を決定づける重要なカードだ。

そのため、プロアマ問わずカードゲームプレーヤーであれば、誰しも1枚のドローに一喜一憂した経験があるのではないだろうか。プレーの巧拙を即座には判断しにくいカードゲーム観戦において、「選択肢が増える」瞬間であるトップデックは観る側にとっても試合の動きが見えるため、分かりやすい盛り上がりポイントといえよう。

もちろんトップデックはドローによるものであり、その瞬間にプレーヤーの技量が介入する余地は極めて少ない。トップデックばかりに注目してしまうと、プレーヤーのスキルが光る場面を見逃してしまうという指摘は至極当然だ。筆者としても、選手の選択が勝利を手繰り寄せる瞬間にも是非注目してもらいたい。

ではトップデックはすべて運任せで、見るべきものはないのかというと、そうではない。ドローの瞬間のみに注目すれば「都合よく引いただけ」に見えるカードも、そこに至るまでの選択がわずかでも違っていれば役立たずに終わっていた……という状況はしばしばある。

こうした「トップデック×ドローを活かしきるためのゲームメイク」について、昨シーズンのリーグチャンピオンシップにおける一幕を堀下げながら考えてみよう。

割り切りの判断と勝ち筋の最大化

2月16日に実施されたリーグチャンピオンシップでは、1stシーズン王者のよしもとLibalent(現 NTT-WEST Libalent)と2ndシーズンを制したAXIZが年間チャンピオンの座を争った。

両チーム3勝ずつのタイで迎えた第7試合では、よしもとLibalentからSurre選手と、AXIZからGemo選手がぶつかった。Surre選手のデッキは柔軟な動きが特徴で、当時の競技シーンを牽引する妖怪ネクロマンサー。対するGemo選手は苛烈な攻撃で素早く相手の体力を奪い去る潜伏ロイヤルを使用。

先に結果に触れてしまうと、Gemo選手が先攻6ターン目に《クイックブレーダー》(=カード名)をドローし、相手の体力をちょうど削り切って勝利した。

苦境を覆し、Gemo選手(画面上側)の勝利を決定づけたトップデックの《クイックブレーダー》

このシーンだけでは、盤面と手札だけでは足りなかった打点をトップデックの《クイックブレーダー》が補い、幸運にも勝ちに繋がったと見る人がいるかもしれない。そこでこの試合の過程を見直し、Gemo選手のプレーが異なっていたらどうなっていたのか、考えてみたい。

まずは4ターン目のこの場面。3体のフォロワーを並べ、体力面でもリードしているSurre選手が優勢といえるシーンだ。

攻撃的な潜伏ロイヤルに対して、逆に序盤から猛攻をしかけるSurre選手

Gemo選手は最も攻撃的な《妖刀の鬼・ツバキ》と《黄金の首飾り》のプレーではなく、《両雄激突》で相手の《魔拳法・ソーラ》を破壊する動きを優先。ここで被ダメージを減らせておかないと自分の方が先に体力を削られてしまうため、「負けない」ための形勢判断だ。事実、先の決着シーンを見てみるとGemo選手の体力は残り1。あと少しでもダメージを受けていたらあのトップデックにはたどり着いていない。

続いて5ターン目を見てみよう。体力、盤面のいずれもさらに差が開き、何もしなければ次のターンで負けてしまう局面で、Gemo選手は《火車》1体を処理するにとどめ、潜伏フォロワーを並べて相手の体力を削りにいくプレーに舵を切った。

Surre選手の盤面+進化ですでに13点が見えており、1体以上の処理を強要されている

もちろん《両雄激突》を使えばもう少し相手盤面に対応でき、次の相手ターンで押し切られてしまう可能性を潰せただろう。しかしその場合、余るコスト4で自分の場に十分な攻撃力を用意できず、その次の自分のターンで勝ち切ることが難しい状況でもあった。最小限の盤面処理は「勝つため」の形勢判断によって、相手に押し切られるリスクを負ってでも勝ち筋を広げにいった結果と言える。

実際に《火車》のみを処理した場合、《グール》で《ドクロ親父》のラストワード能力を起動されると、攻撃力アップの効果次第で次のターンに押し切られる危険はつきまとうが、この時点でSurre選手のデッキに《グール》は2枚のみ。《ドクロ親父》のラストワード対象がランダムという点を踏まえても、実際にその負け筋を踏んでしまう可能性はかなり低い。

Surre選手のデッキのうち、Gemo選手のプレーが直接の裏目になるのは《グール》のみ。《大妖狐・ギンセツ》は持たれていた場合、盤面処理の程度に関わらず敗色濃厚として、Gemo選手は割り切っていた

それに対してGemo選手がここで《両雄激突》による処理に舵を切った場合、次のターンで勝ち切るためには《二刀流》ドローがマストだ。確率にして10%弱と絶望的だが、《妖刀の鬼・ツバキ》を場に出しておければ、《クイックブレーダー》を含む6種類のカードが勝ちに繋がる切り札となる。その場合、次のドローでいずれかを引ける確率は45%弱まで一気に跳ね上がるのだ。

赤枠がGemo選手のプレーによって追加された有効札。青枠からの増え方は一目瞭然だ

反対に、Gemo選手が5ターン目に守りに走っていたなら、勝利シーンで会場を震わせた《クイックブレーダー》はむなしいドローになっていただろう。

トップデックで勝負が動いた瞬間だけを切り出して「運が良い」と片付けてしまいがちだが、丁寧に試合を見返してみると点在するプレー分岐を潜り抜けた先にたどり着いた勝利であることは少なくない。

これから始まるプロリーグ20-21シーズンでは、開幕戦を「ナテラ崩壊」環境で行うが、環境の特徴として、1ゲームにおけるドロー枚数が多いという点が挙げられる。おそらく様々な名トップデックが生まれることだろう。是非プロ選手の熱い戦いの中、もたらされるトップデックのドラマと、それを導き出す選手の技量に注目していただきたい。

【RAGE Shadowverse Pro League 20-21シーズン 第1節】
ABEMA
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