日本を代表するプロゲーマー、ウメハラ選手。今やその影響力はeスポーツ界にとどまらず、アスリートとして、そしてビジネスパーソンとしても注目を集めています。

そんなウメハラ選手の悩み、それは「大会に真剣になれない」こと。ゲームを仕事として割り切れないその心情の裏には「ゲームが好き」という純粋な気持ちがありました。

ときど選手はライバルとして「ふさわしくない」

――「獣道弐」(※)でのウメハラ選手VSときど選手のカードはコミュニティにとって歴史的な一戦でした。ウメハラ選手にとってはどのような試合でしたか?

※2018年3月に開催された、ウメハラ選手主催のエキシビションマッチ。

2017年のシーズンで、ときどは「EVO」優勝に加え「CAPCOM CUP 2017」準優勝という成績を残していて、誰が見ても一番活躍したプレーヤーでした。反面、僕の年間通しての成績は中の上くらい。あまり良いものではありませんでした。

そんな中、ときどの方から対戦の申し入れがきたんです。「獣道」の試合は10本先取という長期戦で、プレーヤーの地力が直接勝敗に影響します。元々長期戦が得意ですが「これに負けてしまったらプレーヤーとしての存在意義を失ってしまうな」という緊張感がありました。大会の結果だけでなく実力までときどに負けてしまっては、立場がなくなってしまうからです。だから「獣道弐」の前は、練習相手にも厳しい注文を出しながら、真剣に準備をしていました。

その努力が実を結び、試合が始まってすぐ「これは勝ったな」という手ごたえがありました。相手の動きが全て想像の範疇で、自分の対策が上回っていたんです。その結果、10-5でときどに勝つことができました。

――先日の「TOPANGA CHAMPIONSHIP」ではときど選手が7-0でウメハラ選手に勝利しています。「獣道弐」から変化を感じましたか?

今回は「獣道弐」の逆で、3試合ほど終えてから「これは負けたな」という感触がありました。もちろん練習に付き合ってくれた人や応援してくれている方々のために、試合が終わるまで試行錯誤はしました。しかしときどの方が圧倒的に深く対策を練ってきていましたね。

負けはしましたが、大会前の取り組みは自分が納得できるまでしっかりできていたので後悔はありませんでした。この一戦は、ときどのガイル(※)戦への取り組みが、どれだけ良質だったかの証明だと思います。

※ウメハラ選手の使用キャラクター

――そんなときど選手をライバルとして捉えていますか?

ときどが僕をライバル視しているのはもちろん感じています。しかし正直言うと「ストリートファイターV」(以下ストV)というゲームにおいて、それはお門違いなのではないかと感じています。

ときどは「ストV」では圧倒的トッププレーヤーですが、僕はそうではありません。大会成績的に、藤村選手やボンちゃん選手など、ライバル視するべき相手がいるのではないかと思うのです。

過去に自分のライバルと広く言われていた相手といえばオオヌキなどがいますが、彼とは大会で常に優勝を競り合っていて、誰が見てもライバルだったと思います。ただ、ときどと今の自分の場合は、大会成績に大きな差があります。

しかしときどを含め皆がライバルと呼んでくれるなら、ときどのライバルとして相応しい存在になるべく精進しなくてはいけないな、と思います。

ウメハラ選手は、大会に真剣になれない

大会のモチベーション作りが課題と語る

――ウメハラ選手にとって、大会とはどのような存在ですか?

大会の成績が一番大事だとは決して思っていません。しかし世間は大会の成績でプレーヤーを評価しているところが多いので、そこは、わきまえて意識しています。

例えば、今シーズンのガイルは非常に性能が良く、大会に向けてしっかり取り組むことができれば良い成績が見込めます。しかし、プロゲーマーになって10年たった今、大会で勝つことだけを目標としてモチベーションを高めることは難しい。しかもプロシーズンは年間を通してありますから、一大会のみならず、一つ、また一つと、持続させるというのはさらに難しいことです。

10年間仕事としてゲームをやってきて、プロ活動の一部として休みなく毎日練習する習慣は付きました。一日のプレー時間で見ればプロの中でも多い方だと自負しています。ただし、そこに大会に対する真剣さが伴わないと、良い練習にはなりません。そのためには、モチベーション作りが必要で、それが課題ですね。

――大会に真剣になれないのは何故でしょうか?

これは甘えた意見ですが、大会に向けての練習って楽しくないんです。なぜなら大会という場は、不特定の選手と対戦を続けて、勝ち残って行って、本当に強い相手と対戦できるかといったら、そういうものではないから。大会には大会の醍醐味がありますが、僕は心底格闘ゲームが好きで、純粋に強い人と対戦することを楽しみにしています。だから、一般的な大会のための練習期間が苦痛に感じられてしまうんです。

本当に強い選手だけを集めたイベント、例えば「TOPANGA CHAMPIONSHIP」は違いますね。

ウメハラ選手がストリートファイター次回作に求めるもの

とにかく強いプレーヤーと戦いたい、と力強く語る

――格闘ゲーム好きのウメハラ選手は「ストリートファイター」シリーズの次回作に何を求めますか?

まず「ストV」がやろうとしていたこと、コンセプトの部分は非常に良かったと思います。ただ、バランスをとるのに少し時間がかかりすぎてしまった印象はありますね。

特にシーズン5になってからのバランスは良いですし、最近は「TOPANGA CHAMPIONSHIP」などを通じてPC版でプレーする機会が多かったのですが、これを基準とするならば「ストV」はとても面白いゲームだと思います。

強いて言うなら次回作では昔の格闘ゲームにあったスピード感が取り入れられたら嬉しいなと思います。

とはいえ、これはゲーム開発のプロでもなんでもない僕の感想に過ぎません。。「ストV」には今までの格闘ゲームになかったクリエイティブな要素も多く、これは開発側に格闘ゲームに対する熱意を持った方々がいることの表れです。次回作では今の熱意を保ったまま、もっともっと新しいことに挑戦してほしいですね。

「ストV」は初心者を取り込むことに重きを置きました。しかし初心者をケアするのは僕らコミュニティの仕事だと考えます。開発の方々は初心者のことは気にせずに思いっきり「新しい格闘ゲーム」を作ってほしいです。新しいゲームの方が、プレーする皆も楽しいですしね。

ストリートファイターVについて

「ストリートファイター」シリーズは、1987年に業務用ゲーム機として第1作目を発売後、1991年発売の『ストリートファイターII』において大ヒットを記録しました。
革新的な対戦システムが話題を呼び、家庭用ゲームソフトでは全世界でシリーズ累計 4,500万本(2020年3月末日時点)の出荷を誇るなど、対戦格闘ゲームというジャンルを確立。
登場から 30年経た今なお世界中で人気を博しており、eSportsにおける格闘ゲーム分野を牽引するタイトルとなっています。
「ストリートファイター」シリーズ史上初の「PlayStationR4」ユーザーと PC ユーザーが対戦できる「クロスプラットフォーム」プレイの導入を実現しております。
最新作は2020年2月14日発売の「ストリートファイターV チャンピオンエディション」(PS4/PC)になります。

ストリートファイター公式サイト