eスポーツで困難や限界を超える 「ePARA」に込めた思い

eスポーツは様々な境界を越える力を持っていると言えます。障がいもその一つです。障がいのあるプレーヤーに向けたイベント「ePARA」を企画する会社を経営する加藤大貴さん(38)にeスポーツを通じたバリアフリーに向けた思いについて寄稿していただきました。
eスポーツは様々な境界を越える力を持っていると言えます。障がいもその一つです。障がいのあるプレーヤーに向けたイベント「ePARA」を企画する会社を経営する加藤大貴さん(38)にeスポーツを通じたバリアフリーに向けた思いについて寄稿していただきました。
2019年11月24日、東京都新宿区のビルの一室は熱気に包まれていました。日本初の「障がい者就労支援」を目的としたeスポーツ大会「ePARA2019」が開かれたのです。「ぷよぷよeスポーツ」のエキシビションマッチや「鉄拳7」のトーナメントが行われ、北は北海道、南は長崎まで全国の障がい者が集まり、盛り上がった1日となりました。
「ePARA2019」は私が代表を務めるePARA実行委員会が主催しました。実行委は、大会やイベントを通して「困難や限界を超える精神や力」を多くの人に発信し、より良い社会の実現を目指しています。「PARA」はパラリンピックと同様に平行を意味するパラレルであり、 将来的にはリーグ優勝者がトップeスポーツプレーヤーと対等に試合を行えるようになる「物語性」も含め、大会名と団体名を「ePARA」に定めました。
「ゲームを通して、健常者・障がい者の垣根なく楽しめる環境を用意してもらったので、存分に楽しんでいきたいと思います」。大会は『五体不満足』で知られる乙武洋匡さんの開会宣言で始まりました。
宣言後、乙武さんが素早く移動した先は車椅子に乗る少年でした。「今日は一緒に楽しもうね」と声をかけた姿に、会場にいた参加者も温かい気持ちに包まれました。
午前は「ぷよぷよeスポーツ」のエキシビションマッチでした。1戦目は、乙武さんと車椅子YouTuberの寺田ユースケさんによる師弟対決が行われました。試合の模様は寺田さんのチャンネル「寺田家TV - TERADA TV」で紹介されています。2戦目は、筋ジストロフィー当事者でYouTuberでもある鳥越勝さん(「とりすま/障がいや難病のある当事者やご家族のための情報チャンネル」)と国立八雲病院からオンラインで参加した吉成健太朗さん。3戦目は私の家族と、夫が視覚障害で妻が半身麻痺という加藤ご夫妻との「加藤家対決」となりました。
午後は鉄拳7のトーナメントでした。1チーム3人で4チームによる戦い。 「初めて鉄拳をプレーする」という人から「プロの鉄拳プレーヤーになりたい!」という人まで、さまざまな方が参加しました。
記念すべき第1回大会で頂点に立ったのはカステラ(たこ焼き味)チーム。大将は大阪から来た「むぎちゃん」(写真左)が務めましたが、「まぁくん」(写真中央)が圧倒的な強さを示しました。さらに、プロゲーマーS.H.O.W (ショウ)さんとのエキシビション対決も開催し、会場は盛り上がりました。
また、ePARA2019の開催後、eスポーツに興味がある障がい者と新たな縁が生まれました。私たちが運営する障がい者eスポーツメディア「ePARA」への寄稿のため、5人と記事執筆の契約を結ぶことにもなりました。
第1回大会の「ePARA2019」が大変好評であったため、私たちは今年は複数の大会・イベントを開催すべく準備していました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オフラインのイベントは軒並み中止となってしまいました。その中には行政と連携し、パラリンピックと連動したeスポーツイベントの構想もあったため、非常に悔しい思いもしました。
しかし、eスポーツにはオンラインでも開催できる強みがあります。「ピンチはチャンスだ」と思い直し、4月には、障がい者30人を集めてオンライン上でのモバイルゲーム体験会「PUBG MOBILE体験会」を開催すると、大いに盛り上がりました。
体験会に参加した障がい者からは「次回イベントにも是非参加したい」「今度は運営も手伝いたい」といううれしい声を多数いただき、「こんな社会情勢だからこそ、『障がいの有無に関わらずコミュニケーションを図れるイベント』を開催しなければならない」との思いを強くしました。
そして、今月31日には第2回大会として、「バリアフリーeスポーツ ePARA2020」を開催します。「誰一人として取り残さない」という「SDGs」の取り組みに共感し、「SDGs eSports」をテーマに掲げることにしました。eスポーツを通じて、障がい者にやりがいを持った業務に就くことができる機会を提供し、「障がい者がその個性に応じて活躍できる社会」の実現を目指す。このような夢を実現するためのきっかけとなる大会にしたいと考えています。皆様もオンライン上で是非ご参加、ご視聴ください!
2020年5月31日午前11時~午後3時
第1部 オンラインディスカッション
第2部 ぷよぷよeシリーズエキシビジョンマッチ
第3部 一般参加者によるゲームマッチ
配信用URL:https://youtu.be/DQJMie3TZz8
裁判所書記官として8年間勤務。その経験を通じて障がい者や高齢者の福祉に関心を持ち、品川区社会福祉協議会に転職。2020年に株式会社ePARAの代表取締役に就任。NPO 市民後見支援協会理事も務める。