新型コロナウイルスの感染拡大が世界中に広がっています。密閉した空間を避けるため、様々な分野が深刻な打撃を受けています。

eスポーツはどうでしょう。サッカーや野球のような一般的なスポーツと異なり、主にオンラインゲームを活用するスポーツのため、その影響は少ないように思われます。

しかし実際には多くのeスポーツ大会、イベントがオフライン会場を貸し切って開催されてきたため、その多くが中止・延期を余儀なくされました。

新型コロナがeスポーツ界にどのように影響を与え、そしてこの苦境を乗り越えるために何が必要なのでしょうか。eスポーツ専門会社として、「クラッシュ・ロワイヤル」「#コンパス」「ドラゴンクエストライバルズ」などの大会を支えるウェルプレイド株式会社の共同CEO高尾恭平さんにインタビューしました。

ゲームを極めた先の世界を作りたい

――まずはウェルプレイドの仕事について教えて下さい。

格闘ゲームを通じて知り合った谷田(優也=ウェルプレイド共同CEO)と、「ゲームにもっと市民権を」というビジョンを掲げて5年前に創業したのが始まりです。まだeスポーツという概念が日本であまり浸透していない時代から、ゲームがうまい人が輝ける場所を作りたいと考えて試行錯誤してきました。その一つがプレーヤーが活躍するための公式・公認大会の運営であり、そこで台頭したプレーヤーをサポートするためのマネジメントや、プレーヤーを外に紹介するためのメディアまで自分たちで用意することで、ゲームをやり込んだ先の世界を作ることが自分たちウェルプレイドの取り組みです。

――ウェルプレイド運営の大会の中ではオフラインの催しも多く開催されています。やはりオフラインにこだわりがありますか。

今回の新型コロナを通じて改めて考えた点ですが、ゲームの競技ってオンラインでも見る・遊ぶ分には概ね同じなのに、あえてオフラインでやりたいと思う理由は何だろうと考えたら、選手の感情を直接観る・観られることでゲームを深い所で共感できるからなんですよね。それに、自分たちは色々なゲームのブースを用意して、参加した人が強さに関わらず楽しめるオフラインイベント「ウェルプレイドフェスティバル」も開催していて、前回も好評でした。「ゲームにもっと市民権を」と掲げているウェルプレイドだからこそ、ゲームを介してもっと広く人が繋がれる場所として現実の空間を選んできたので、オフラインという環境にはこだわりがありますね。

――そのウェルプレイドフェスティバルを含め、ウェルプレイドのオフラインへの想いが大阪のREDEEからも伝わるようでした。

僕らウェルプレイドがREDEE(大阪府吹田市にある日本最大級のゲーム・eスポーツ専用施設)を作る原点はEVO(世界最大級の格闘ゲームの祭典)でした。元々僕らは会社ぐるみでEVOに参加するぐらいEVOが好きで。EVOってアメリカのラスベガスで開催される巨大な格闘ゲームの世界大会なんですが、ただ観戦するだけじゃなくて、実際に参加してプレイすることもできるし、そのままラスベガスのカジノやショッピングを楽しんだりと、ゲーム好きが集まってゲーム以外のことも含めて楽しめる場所なんですよね。REDEEも大阪のEXPOCITYという場所にあるんですが、ここでも買い物を楽しんだり、一緒にご飯を食べる場所もたくさんあって、REDEEを通してゲームだけにとらわれず広く楽しめる場所を作りたいと思っています。

新施設オープンと重なった新型コロナの感染拡大

――そのREDEEですが、新型コロナ感染拡大防止のためオープンから僅か2週間で休館となりました。オープンと同日に開催予定だったウェルプレイドフェスも延期となり、大変重い決断だったと思います。当時の心情をお聞かせください。

うーん、本当に絶妙なタイミングでした。社内でも、何ヶ月も掛けて作ってきたので「やりたい」という声も強かったのですが、新型コロナの驚異が広がるにつれ不安視する声も広がって。そんな中で開催することは、僕ら社員だけでなく、来てくれたお客様を危険に晒すかもしれない。そういうリスクを考えた時「自分たちが楽しめないものは開催できない」と考え、2月26日に延期を決断しました。

――同じ日に政府からイベントの自粛を求める発表がありましたが、それを受けて延期したわけではないのですか?

実はそれより少し早く中止を決定していました。中止を決断した当日、既に大阪入りしていた僕は早朝にカフェで経営陣に延期を伝える旨の文面を書いていたんですが、何ヶ月も会社が一丸となって準備し、経済的な損失も計り知れない中、そうした全てが延期として決定される文面を書いた事実に、正直手が震えて中々チャットの送信ボタンが押せませんでしたね。この決断には経営陣を含め周囲もすぐ納得してもらい、そこから演者、スポンサー、パブリッシャーの方など100名以上の関係者に連絡を取り、その日の午後7時ごろようやく決断の発表を出せました。

――苦渋の決断だったと思います。一方ウェルプレイドフェスの中止を受けて、ドズルさんなど、何かしら支援したいという声も多くの方からあがっていました。

「クラロワ」等で有名なYouTuberのドズルさんが、「ウェルプレイドフェスを救いたい」というタイトルで10時間配信してくれたんですよね。正直、延期の連絡で忙しかったのも相まって、「ウソでしょ」と全く実感がわかなかったのですが、後から見てとても励みになりました。もちろんドズルさんだけでなくて、ファンからは「フェスに行けないのは残念だけど、REDEEには行く(REDEEは3月16日から臨時休館)」と応援していただいたり、関係各社からも「困ったらすぐ相談してほしい」「こういう時こそ一緒に仕事がしたい」と声をかけていただいたこともあって、今まで積み重ねてきた信頼を実感できましたね。

苦境を乗り越えた先にあるものは

ウェルプレイド株式会社の共同CEO高尾恭平さん

――REDEEが休館となってからウェルプレイドではどのようにイベントを作られていますか?

「#コンパス」「荒野行動」などのウェルプレイドリーグを中心に、オンラインのイベントを開いています。また弊社ディレクターのちゃんじろが中心になって考えてくれた「まいにちゆる配信!ウェルプレイドマーチ」という番組で独自の企画を練ったり、裏方のお仕事としてオンライン大会の運営・配信を多数こなしています。

――オンラインでeスポーツのコンテンツを展開する上で何に気をつけていますか?

新型コロナウィルスという脅威に対して、まず全員が安全であること。選手とお客さんがオンラインで参加するのは当然ですが、それを支える制作、ディレクター、スイッチャーも皆リモートで大会を作っています。いくら選手が安全でも社員が集まってたら意味ないですからね。それと、なるべくオフラインと同じ環境を再現することも心がけています。

――今後、コロナ禍を受け、eスポーツはどのように変化すると考えていますか?

2つ変化があると考えています。1つは現在進行系で起きてることなんですが、プレーヤーが自らオンラインを通して大会を開くようになっているんです。元々ユーザー主催の大会はありましたが、特にいまこんな状況なので自分たちで変えていこうと、いうならばeスポーツを自分ごと化しているように感じました。もう1つはeスポーツを役立てる人が増えていくこと。プロテニスプレーヤーも参加する「マリオテニス」のトーナメントが開かれたり、田中将大さんが「クラロワ」を使って「マー君CUP」という大会を開いたり、自粛のために外で活動できない人がeスポーツを活用して新しいものを作っていってますよね。これまで以上にeスポーツの可能性についてポジティブに注目されていくと思います。

――とはいえ、eスポーツ専門会社としてオフラインだからこそやりたいことはあると思います。自粛が明けたらどんな企画に取り組みますか?

今回の新型コロナの影響を受けて、改めてゲームを通じた何気ない交流の大切さみたいなものを実感した人は多いと思います。ゲームがうまい人が活躍できる場所としての大会も作りたいですし、ただ皆がゲームを通じてコミュニケーションを楽しむようなゆるいイベントもやってみたいですね。

高尾恭平(たかお・きょうへい)

ウェルプレイド株式会社共同CEO。2010年にモバイルゲームのディレクターに転向後、株式会社Synphonie(現:enish)に入社。ソーシャルゲーム「ぼくらのポケットダンジョン2」、「魁 ! 男塾」等の開発・運営に従事。2014年に子会社であるenish KoreaのCEOに就任。 2015年、ウェルプレイド株式会社を創立。