ウメハラが語る格ゲー愛「一度諦めたからこそ、自分にはゲームしかない」

日本を代表するプロゲーマー、ウメハラ選手。
「EVO 2004」での「背水の逆転劇」をはじめ、これまでに数々の伝説を残しており、世界中の格闘ゲーマーにとってレジェンドのような存在です。
スポンサーには、レッドブル、Twitch、HyperX(キングストンテクノロジー)の名だたるグローバル企業3社が名を連ねます。
そんなウメハラ選手は、どのようにゲームと出会い、そしてどのように「プロゲーマー」の道を切り開いたのでしょうか。ウメハラ選手のルーツをうかがいました。
ーー今では誰もが知るプロゲーマーのウメハラ選手ですが、格闘ゲームとの出会いはいつでしたか?
11歳の時にレンタルビデオショップに置いてあった「ストリートファイターII」(以下、ストII)の筐体(きょうたい)で遊んだのが最初ですね。
「ストII」は家庭用のゲームとは性能が段違いで、音や映像のきれいさが印象的でした。
特に当時のゲームでは、キャラクターがしゃべることは少なかったのですが、「ストII」ではキャラクターが皆しゃべるので驚きでした。
混んでいてゲーム画面が見えない時でも「波動拳」のボイスは聞こえたのを覚えています。
ーーでは、対戦ツールとして格闘ゲームに熱中しはじめたのはいつごろですか?
最初は友達と遊んでいたんですが、僕が小学6年のころ、「ストリートファイターII’」の時にはじめて対戦台が導入されて、知らない人と気軽に対戦できるようになったんです。
そこから徐々に対戦ゲームとしてプレーし始めました。
当時のゲームセンターはまだ危ないところで、僕はそこではいつも最年少だったんですが、その分刺激を感じていました。
中学2年くらいからは、その刺激を求めて毎日行くようになっていました。
当時は今とは違ってプロゲーマーの存在もなければ、大会も頻繁にはなかったんです。
ただただ「一番強いプレーヤーになりたい」との思いがモチベーションでしたね。
ーー当時の格闘ゲームには今とは違う魅力があったのでしょうか?
「ストII」の時代は今とは比べ物にならないほどプレー人口が多くて、とても熱気があった印象があります。子供だった自分には、より大きく刺激が感じられたのかもしれませんが、格闘ゲームコミュニティはとにかく熱く活力がありました。
ーーウメハラさんがトッププレーヤーとして知られるようになったのはいつごろからですか?
自分が14歳くらいのころに稼働が始まった「ヴァンパイアハンター」の時代ですね。
「ストII」時代も熱中はしていたんですが、自分がゲームセンターに行き始めた頃にはもうゲームは出て2年ぐらい経っていて、最初からプレーしている人たちにはかないませんでした。
「ヴァンパイアハンター」は新しいゲームだったので、その分、熱意をもってやりこんでいました。
ーーそれ以来ずっとゲームに熱中されているのでしょうか?
いえ、22歳のころ一度ゲームをやめて、それから麻雀の世界に身を投じた期間が2~3年ほどありました。
ゲームが本当に好きで誰にも負けない腕を持っているという自信もありましたが、当時は「プロゲーマー」という存在もなく、ゲームでは食っていけないと気づいたんです。
僕は「めちゃくちゃやる」か「やらない」の選択肢しか持っていない人間で。
22歳でゲームを「めちゃくちゃやる」訳にはいかないだろうと思い、趣味として続けていくということもできないので、すっぱりやめていました。
ーーでは、どんなきっかけからゲームに復帰されたのでしょうか?
麻雀に挑戦した後は介護職に就いていて、その頃に新しく「ストリートファイターIV」が稼働開始されたんです。
執拗に誘う友人に断りきれず、久しぶりに足を運びプレーしてみると、だいぶブランクがあったにもかかわらず、思い通りにキャラクターを動かせたんです。
そこから、また格闘ゲームをするようになりました。ですが、あくまでのめり込まないように「遊び」として心に歯止めをかけながらです。
ところが、「背水の陣」を通じて海外に多くのファンの方がいたこともあって「EVO」に招待され、そこでもいい結果が出せ、とある企業から、プロにならないかと声がかかったんです。それは僕に大きな喜びでもあり苦悶を招きました。
その当時は他にプロゲーマーという存在はなく、悩み抜きましたが「これが最後のチャンスだ」と思ってプロになりました。
ーーそれ以来ずっと最前線で戦われているウメハラ選手ですが、その原動力は何ですか?
やはりゲームが好きということでしょう。
才能があるプレーヤーはたくさんいても、自分ほど純粋に格闘ゲームが好きなプレーヤーはいないと思っています。
僕が一定のモチベーションを保持できているのは、格闘ゲームが好きだという気持ちが根底にあるからです。
例えば、若い人がゲームを始めたけれど「自分には他の道があるかもしれない」と考えてしまうと、その分上達は遅くなります。
僕はゲームから離れた期間があっただけに、ゲーム以上に自分が輝くことはないとはっきりとわかっています。
だから「自分にはこれしかない」と思ってゲームができるんです。
ーー周りにも同じようにゲームが好きな人が増えてほしいと思いますか?
そうですね。有名になりたいとか、お金を稼ぐ手段としてゲームをしている人と、純粋に好きでゲームをしている人であれば、僕は後者を応援したくなりますよね。
そういう人が一人でも増えてくれたらいいなと思っています。
(取材協力:Cooperstown Entertainment, LLC)
「ストリートファイター」シリーズは、1987年に業務用ゲーム機として第1作目を発売後、1991年発売の『ストリートファイターII』において大ヒットを記録しました。革新的な対戦システムが話題を呼び、家庭用ゲームソフトでは全世界でシリーズ累計4,400万本(2019年12月時点)の出荷を誇るなど、対戦格闘ゲームというジャンルを確立。
登場から 30年経た今なお世界中で人気を博しており、eSportsにおける格闘ゲーム分野を牽引するタイトルとなっています。「ストリートファイター」シリーズ史上初の「PlayStationR4」ユーザーと PC ユーザーが対戦できる「クロスプラットフォーム」プレイの導入を実現しております。
最新作は2020年2月14日発売の「ストリートファイターⅤ チャンピオンエディション」(PS4/PC)になります。
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