「鉄拳」破壊王を育てたツンツンデレデレ師匠

「何しに『鉄拳』やりに来たんや」
ゲームセンターでそんなこと言われたら、私なら困惑してしまいます。きっと「すみません」としか答えられません。もしかしたら、その場から逃げ出してしまうかも。
しかし「鉄拳」の破壊王選手は、この厳しい言葉を放った男性を師と仰ぎ、成長していきました。「師匠はツンデレな方でしたねぇ」と当時を思い出しながら、笑顔でしみじみとお話ししてくれました。
えーと、破壊王選手、メンタル強すぎやしません?
師匠である宮田さん(通称、みやっさん)と出会ったのは、破壊王選手が高校生になってから。
中学から「鉄拳」を続けていた破壊王選手は、地元である東大阪のゲームセンター「エンジョイパラダイス」で腕を磨いていました。
「でも、強豪だらけの梅田の『モンテカルロ』では全然勝てなかったんですよ」
梅田は交通の便が良いですからね。大阪各地から強豪プレーヤーが集まりやすいのでしょう。
モンテカルロで通用するにはどうしたらいいか悩んでいた頃、タイミングよくエンジョイパラダイスに現れたのが、みやっさんでした。
「みやっさんはモンテカルロを拠点にしていた人ですが、たまにエンジョイパラダイスにも来ていました。そこで交流が生まれたんですよ」
ゲームを通して人とのつながりがひろがるのは、ゲームセンターあるあるですよね~!
「ある日、『鉄拳やる気があるんなら教えたる』と声をかけられました」
格ゲーもコミュニケーションも初手が重要。その選択がベストだと思ったのなんでなの、みやっさん……。
晴れて(?)師を得た破壊王選手。ゲーセンでの対人戦を師匠に見てもらったり、師匠と手合わせしたりと、さまざまな指導を受けました。
「言葉がキツく、アドバイスの内容が感覚的で、なかなかのみ込みづらいこともありました」と破壊王選手は師匠の指導を振り返ります。
今ですら、ゲームにおけるコーチングは発展途上。破壊王選手がみやっさんと出会った当時は「ゲームを教える」ことすら珍しかったはずです。みやっさんも手探りだったのでしょう。
「『さっきこうしろ言うたやろ』『できひんねやったら辞めろ』とか、いろいろ言われました」
手探りにしてもキツすぎやしませんか、みやっさん。
「でも、教えてもらった動きができたときは褒めてくれるんですよ。ツンデレ師匠なんです」
ツンが強すぎる気はしますが、たしかにそんな方から褒められるとモチベーションは保てそうです。
ただし、褒め方は「やるやん」と素っ気ないものだったそう。もっと褒めてあげて……。
みやっさんはとことん実戦主義。とにかく「相手がこう動いてきたこう返す」という対策を重視していたそうです。
普段の対戦でできない動きは、ここ一番の大勝負でも再現できません。破壊王選手は師匠からの教えを守り、ひたすら対人戦を重ねることでスキルを磨いていきました。
破壊王選手は元から人との対戦が好きだったそうなので、自分の性にも合った練習スタイルだったのでしょう。
今ではゲームセンターではなく、OMENのPCでSTEAM版の鉄拳で練習することがほとんどですが、「練習方法は少しも変わっていません」と破壊王選手。「とにかくオンラインで対戦して『この相手を倒すにはどう動くべきか』を考えながら、動きを体で覚えられるようにしています」
破壊王選手は師匠の目が届かないところでも、教えを守り続けているのです。
前編でも触れたように、練習を続けた先に目指すものは「『鉄拳』での世界一」という破壊王選手。
みやっさん、あなたの指導が世界一のキング使いを生み出すのは、そう遠くない未来の話かもしれませんよ!
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