野球部で培った根性がゲームにも生きた

破壊王選手が「鉄拳」と出会ったのは、中学2年生の頃でした。友人と共に訪れたゲームセンターで、「鉄拳5」の美麗なグラフィックに目を引かれたそうです。

興味本位でプレーしたものの、常連プレーヤーとの対戦では惨敗。その悔しさがバネとなって、「鉄拳」にのめり込み始めたと話します。 

「当時はPlaystation2版『鉄拳5』を持っていなかったので、毎週土日に朝から友人の家に押しかけ、ひたすらプレーしていました」

その後も破壊王選手は別のゲーセンを拠点とし、コツコツと対戦を重ねました。中学、高校、専門学校と、10年近くにおよぶ青春はすべて「鉄拳」に捧げたそうです。

この長い間、「鉄拳」だけをプレーし続けられた理由について、「努力が少しずつ実を結ぶのが実感できるからです。雲の上の存在だと思っていた人たちともだんだん渡り合えるようになるのが楽しくて、ずっと対戦ばかりしてしまいました」と話します。

中学時代は野球部に所属し、捕手で3番打者という中心選手でした。「長く続けられたことには、野球部での経験も生きているのかもしれません。ハードな練習を通して、忍耐力が身につきました」

真剣な表情で試合に臨む破壊王選手(撮影・志田彩香)
真剣な表情で試合に臨む破壊王選手(撮影・志田彩香)

何も知らずに出た大会でプロに

そんな青春を経て社会人に。「鉄拳」を通して知り合った女性と25歳で結婚し、仕事に追われながらも、練習は欠かさず続けました。しかし、妻が出産を控える中、いよいよ「鉄拳」に時間を費やす生活に終止符を打とう、と考えるようになりました。

「『鉄拳』を辞めようかと迷っていた時期に、たまたまオンライン大会が開かれていたんです。最後に出てみようと、軽い気持ちで参加しました」

破壊王選手が出場したのは、2017年の末に開かれた「日本王者決定戦」の西日本オンライン予選でした。

どんな大会なのかすら知らずに出場したそうですが、本戦まで勝ち上がります。最終的な結果は3位。2018年2月の「闘会議2018 鉄拳7 ~ Break the world ~」への出場権を手にします。日本eスポーツ連合(JeSU)が初めて、成績上位者にプロライセンスを与えることを定めた大会でした。

「出場権を得た闘会議でも勝ち、『鉄拳7』のプロライセンスをいただけました。当時はライセンスが何なのかも知らなかったのですが、せっかくいただいたからには、辞めずに本気で『鉄拳』に取り組もうと思いました」

左手薬指に指輪が光る破壊王選手
左手薬指に指輪が光る破壊王選手

プロとして生きる道を切り開いた逆転勝利

プロライセンスを取得した破壊王選手は、妻と家事・子育てを協力し合い、正社員として大阪府内の会社に勤めながら、プロゲーマーとしての活動も続ける「兼業プロゲーマー」の道を選びました。

プロとしてのキャリアが大きく変わったのは、2018年9月に行われた東京ゲームショウ内の「鉄拳プロチャンピオンシップ 日本代表決定戦」だと話します。

破壊王選手は決勝まで勝ち上がったものの、相手のダブル選手にマッチポイントまで追い込まれてしまいます。しかし、敗北目前でも取り乱すことなく、見事逆転勝利を遂げました。

「かつては追い込まれると、どうしても気持ちに焦りが生まれていましたが、子どもが生まれてからは『負けたら負けたで仕方ない』と良い意味で割り切れるようになりました」

気持ちの余裕が生む冷静なプレー。劇的な勝利は、プロeスポーツチーム「Team HYDE」からのオファーも引き寄せ、破壊王選手は晴れて同チームの所属選手となりました。「もし負けていたら、スポンサーさんはつかなかったと思います」と振り返ります。

今後の目標について「一度は世界一を取りたい」と破壊王選手は話します。「家庭を持っていても、(フルタイムで働く)会社員でも、努力し続ければプロゲーマーになれるんだ、って社会人の方々に伝えたいですね」と優しい笑顔で話しました。