「グランツーリスモ」(GT)、世界選手権シリーズ「ワールドツアー」2020年シドニー大会

売りは画質の美しさ

GTは、ソニーグループのポリフォニー・デジタルが作成。1997年に産声を上げ、17年発売開始の『グランツーリスモSPORT』が最新作となっています。

売りは、画質の美しさ。市販車からレーシングカー、コンセプトカーまで国内外の150台以上の車を収録し、鈴鹿、ル・マンなど実在する人気コースから公道をモチーフにした首都高速まで多彩なコースを走れますが、ゲーム画面だと知らせずに動画を見せると、「リアルなレースだと勘違いした」と語る人も出るほどです。 

現実のレースと見まごうほどのグラフィックが魅力
現実のレースと見まごうほどのグラフィックが魅力

 

eスポーツの楽しみ方として、大きく分けて「する」楽しみと「見る」楽しみとがあると思いますが、シドニー大会に参加した山中智瑛選手が「する」楽しみに関して指摘するのもこの点。

GTの魅力について、「自分の好きな車に乗れるうれしさ」とともに、収録されている世界中のサーキットの再現性について指摘します。

「ロケーションそのままに再現され、リアルにシミュレーションできる。(実際にそこで走るとなると)普通ならお金がかかるのが、誰でもできるものになった。実際のサーキットで走った際も、(GTと比べて)違和感がなかった」と語ります。

香港のジョナサン・ウォン選手も現実のサーキットでフォラーリのある車種に乗ったことがあるそうですが、「乗っている時の感覚が、車の動き、操作感、感触、全部、GTと同じだった。どんな車に乗っても気後れしない」と言います。

イゴール・フラガ選手が優勝した情報が流れると、会場内に歓声が上がった
イゴール・フラガ選手が優勝した情報が流れると、会場内に歓声が上がった

一方、GTは「リアルドライビングシミュレーター」とも呼ばれ、実際のF1ドライバーがレース前のシミュレーションとして使うことも。

2018年のワールドツアーファイナルで国別対抗戦「ネイションズカップ」を制したイゴール・フラガ選手は、実際のレースにも挑戦し、リアルとデジタルの双方で活躍しています。

ちょうどシドニー大会最終日、隣国ニュージーランドで最終戦があった若手ドライバーの登竜門「トヨタレーシングシリーズ」で優勝を決めたという速報が入ると、会場からは歓声が上がりました。

他のスポーツゲームのトップ選手が、そのスポーツのリアルな競技の方でもプロになる、というのはなかなかに難しいかもしれませんが、リアルとデジタルとの間の垣根が低いこともGTの魅力の一つと言えそうです。

 

「ミスター・ストラテジー」の大ばくち

シドニー大会は「見る」だいご味も堪能させてくれるレースでした。

レースでは、速いけれど耐久性に乏しいソフトタイヤ、耐久性はあるけれどスピードは劣るハードタイヤ、その中間のミディアムタイヤの3種類を使わなくてはいけませんが、ネイションズカップでは「ミスター・ストラテジー」の異名を取る宮園拓真選手が大ばくちを打ちました。

表彰式で笑顔を見せる宮園拓真選手(中央)
表彰式で笑顔を見せる宮園拓真選手(中央)

  

序盤から続けてピットに入り、ハードからミディアム、ミディアムからソフトへと次々タイヤを替えます。

予選2位で好位置につけていましたが、ピットに入るたびにタイムロスが生まれるので、一気に大差の最下位、12位に。

でも、他の選手と競り合わない分、最短コースで回れるので、ぐいぐいと差を詰めていきます。

終盤には先頭に躍り出て、30周を40分以上かけて争うレースはゴール前、地元オーストラリアの選手との抜きつ抜かれつの競り合いに。

わずか0.029秒差で先頭でゴールインして白熱の一戦を制すと、実況席からは「こんなわずかな差のフィニッシュは聞いたことがない!」との絶叫が響き渡りました。

過去2回のワールドツアーファイナルで12位、9位と順位を上げ、シドニー大会では3位に入ったウォン選手は「みんなどんどん強くなっている」と年々、ツアーのレベルが上がっていると指摘します。

新型コロナウイルスの影響で、5月22、23日にドイツのニュルブルクリンクで予定されていたワールドツアー第2戦は中止となりましたが、ツアーが再開された際にはレースは毎回、インターネット中継されるので、現地まで行くことが難しい方も、その手に汗握る面白さを味わってみてはいかがでしょうか。